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本編
その日私は、とある筋から不思議な人形の飾られた手芸用品店の噂を聞き、その真偽を確かめる為に取材を敢行しました。後述の理由で、詳しい名前は伏せておきます。
店内は女の子らしく可愛い装飾が施されており、品数が特別多い訳ではありませんでしたが、とても居心地のいい空間に仕上がっていました。ただ気になったのは、どうも店の奥の方から人ならざる者の気配がしたことです。
商品を一通り見て回っていると、奥から店主を名乗る女性が現れました。紫色のワンピースを着た彼女は意外なほど若く、聞いてみたところ、去年大学を出たばかりとのことでした。取材のことについて話をしてみたところ、店名を公開しないという条件の下、話を聞く許可が降りました。
私は彼女に奥の部屋へと案内されました。そこには来客用の机と椅子が配置されており、私は促されるがままそこに着席しました。それに続いて店主も私の目の前に座り、改めて話し合いのムードが展開されました。早速取材を始めようと思い、私は最初に最も気になっていたことについて切り出しました。
「そこに置いてあるのが噂の人形とやらですか?」
私は机の上にポツンと置かれた人形について質問しました。陶器製の所謂アンティーク人形というヤツらしく、桃色のドレスを着せられた、栗色巻き毛の女の子の人形でした。
店主は私がいきなりその人形について、人ならざる気配の原因について問いただしたことに驚いたようでしたが、すぐに柔らかな笑みを作ると、その人形を自らの腕に抱きかかえて、話を始めました。
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