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真夜中の兎小屋
星が空高く輝く午前十二時、兎小屋の中で動く人影があった。
その人影は何かを探しているのか、しゃがみながら、
「ない…ない…ない…」
と呟きながら手探りをしていた。
その声で目を覚ましたのか、兎たちはねぐらから出てきた。
兎を見ると人影は突然、狂ったように笑いはじめた。
「あはははははっ!あははっ!そっかぁーそうだったんだぁ!ぜぇーんぶお前たちのせいなんだぁ!」
そして、ズボンのポケットからカッターを取りだした。カチッ、カチッと音を立てながら刃が出てくる。刃は月明かりに照らされ、銀に輝いていた。
人影は一番近くにいた兎を掴み、地面に押さえつけた。
「あるんでしょぉ、お前の中に!今見つけるからねぇ!」
そして兎の腹にカッターを刺した。まるで紙を裁断するのと変わらないかのように、兎の腹を引き裂いていく。
内臓が見えてくると、次は内臓にカッターを突き刺した。何度も、何度も顔にかかる血にも気にせず、狂ったように突き刺した。
すると人影は突然、突き刺すのをやめて叫びだした。
「ないないないない!なんでないのっ!ねぇなんで!!」
叫び終えると再び兎の身体にカッターを突き刺しはじめた。先程とは違い、今度は憎しみをこめて突き刺している。
そして人影は、兎が原型も留めていない肉塊となると他の兎の方を向いた。
「こいつじゃなかった。だから他のやつの中にあったんだぁ!」
また兎に手を伸ばす。
「まだまだ兎はたくさんいるよぉ!」
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