調査

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「ちょっと、兎人くん!どういうこと!?」 「私を一番愛してるんじゃないの!?」 話に入れていなかった百合香と絢芽がそうわめきたてる。 さっきまで二人で争っていた百合香と絢芽だがきずなの出現で争う余裕は無くなったようだ。 「だからね、百合香ちゃんも絢芽ちゃんも他の女の子もみんな平等に愛してるんだよ。誰が一番とかはないんだよ。」 兎人がそう諭すように言うと、二人は少しは落ち着いたようだが、まだきずなを睨んでいた。 「で、兎人くん。僕、聞きたいことがあってここに来たんだけど。」 時雨の言葉に兎人は、 「ああ、兎の事件のことだろう。大方、最後に入った人間について聞きたいんだよね。」 と、聞かれることを察していたようだ。兎人はそのときの様子を流暢に語る。 「最後に入った人間はそこにいる絢芽ちゃんだよ。絢芽ちゃんがご飯当番だからね。夕方の五時ごろに入ってご飯をあげて出てきた。そこは俺がちゃんと見てたよ!」 「なんで兎人くんは見てたの?」 時雨の問いに兎人は答える。 「兎がご飯食べてるところを見るのってすごく癒されるんだよ。それに委員長だから鍵の管理しないとだし。」 「そうそう。兎人くんと小屋にいって餌をやったわ。」 絢芽も兎人の言葉に同調して口を挟んだ。 「じゃあ、何か兎小屋で変わったことはなかった?」 再び時雨の問い。絢芽は、 「はあ?そんなもんないわよ。」 とすぐに答えたが、兎人は何か思い当たる節があったようだ。 「うーん、あっ!ご飯をあげる前黒い兎が何かを飲み込んでた!兎小屋は毎日しっかり掃除してるから異物を飲み込むなんてことはないと思うんだけどなぁ。」 すると今まで口を噤んでた百合香が口を開いた。 「あらあら、鈴里?どうして兎人くんは覚えていてあんたは覚えてないの?」 そう百合香は嘲る。絢芽は一瞬、百合香を睨みつけたが、すぐに口元に薄い笑みを貼り付けた。 「あんたこそ兎なんて嫌いって言ってなかったけ?飼育委員に入ったのも兎人くん目当てなんでしょ。動物好きの兎人くんから嫌われちゃうんじゃない?」 「っ!てめぇ!!」 まさに一触即発の二人を兎人が冷や汗をながしながら、 「お、落ち着いてよ〜。」 と宥めている。 時雨は苦笑いを浮かべながら 「ありがとう。参考になったよ。」 と礼を言った。時雨がこの場から去ろうとすると後ろで隠れていたきずなが、何かに気づいたようだ。 「あ。」 「ん?きずなちゃんどうかしたの?」 時雨の何気ない言葉で、さっきまで冷や汗をながしながらオロオロしていた兎人が急にテンションを上げた。 「君の名前きずなちゃんって言うんだね!かわいい名前だなぁ。何か聞きたいことがあるの?連絡先から今日の予定までなんでも教えてあげるよ!」 兎人の言葉に引いているきずなだが、恐る恐るといったふうに言葉を発した。 「いや、あのー飼育委員長さんも副委員長さんたちもおそろいのネックレス付けてるんですねー。」 その発言に、さっきまで鬼のような形相で絢芽を睨みつけていた百合香が何故か得意そうな顔をして答えた。 「このネックレスはね、兎人くんが手作りで作ったのよ!さすが私の兎人くんだわ!」 「はあ?お前のじゃ「はいはい喧嘩しないでー。」 また言い争いに発展しそうだったが、兎人の一言で静かになった。 「俺ね、アクセサリー作ったりするの好きなんだよね。だから飼育委員は全員同じネックレス持ってるよ。もちろん純玲先生も!」 「ありがとうございまーす。そのネックレスちょっと見せてくれませんかー?」 「いいよ!もしかして欲しいの?でもごめんね!このデザインのネックレスは飼育委員限定だから。」 「いや、別にいいです。」 兎人が自分の首にかけていたネックレスを外し、きずなに渡した。きずなはそのネックレスをじっくりと見ていたが、 「あ。」 手が滑ったのか、ネックレスを落としてしまった。そして、落とした衝撃でネックレスのパーツとチェーンがバラバラになってしまった。 「ちょっとあんた!なに壊してんのよ!」 「兎人くんに気に入られたからって、調子乗るんじゃねーよ!」 絢芽と百合香がきずなに罵声を浴びせるが、きずなは相変わらずの無表情だ。 「すみません。壊しちゃいました。」 無表情だが申し訳なさそうな声色で謝るきずなを兎人は、 「いいよいいよ。これは手作りだからすぐ壊れちゃうんだ。だから気にしないで。」 と笑って許した。 「でも、これで分かったことがあります。ありがとうございましたー。」 きずなはペコりとおじぎをして兎人に礼をいった。 時雨も、 「それじゃあ、ありがとう。バイバイ。」 と再び礼をいい二人はその場を去った。
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