証言

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証言

六時間前、きずなと時雨は旧校舎の図書室を訪れていた。 葛之葉高校には旧校舎と新校舎の二つの建物が存在する。 授業はほとんど新校舎で行われ、主要な特別教室なども新校舎にある。 旧校舎にも一応、理科室や音楽室といった特別教室もあるがほとんど倉庫として使われており、普通教室などは同好会や、マイナーな文化部の部室として使われているのだ。 もっとも、旧校舎の一室を我が城と言わんばかりに占領する者もいるわけだが。 きずなと時雨は、旧校舎の図書室を占領するとある人物に会いにきていたのだ。 「おーい、(まれ)ー。いるー?」 きずなが図書室の扉の前で呼びかけると、奥から 「ほーい、いるよー。」 と返事が返ってきた。 そして奥から少女とも少年とも見える、生徒が出てきた。 奥から出てきた希と呼ばれた生徒。ワイシャツの上にピンクの派手なパーカーを羽織り、スカートと同じ柄のショートパンツを履いている。顔には張り紙が貼られており、その表情を見ることは出来ない。 「なになに、きずなちゃん。こんなところになんの用かな?」 くすくすと笑いながら張り紙の生徒――(かがみ)(まれ)はきずなに問いかけた。 「情報(じょーほー)収集(しゅーしゅー)に来た。」 きずながいつもの調子で答えると、時雨がきずなに耳打ちをしてきた。 「きずなちゃん、この希って子誰?僕の知らない子なんだけど。」 「同じクラスの友達でーす。まー、クラスにはほとんど来てないんですけど。」 「へー。ありがとう。」 二人がコソコソと話してると、希はもー、と不満げな声を出した。 「人の前でコソコソしないでよー!」 希の文句に時雨は言葉を発した。 「ごめんね。えーと、希ちゃん?希くん?」 「どっちでもいいですよー。時雨先輩。」 希の言葉に、時雨はキョトンとした。 「どうして僕の名前を知ってるの?」 その問いに希ではなく、きずなが答えた。 「こいつ、授業サボタージュして人間観察する変人なんですよー。だからここ(葛之葉高校)の人間関係だいたい把握してるんですよー。」 「どやー。」 きずなの言葉に希は得意げに胸を張った。そんな希を見て、きずなはさすが変態、と言い冷やかした。 「まぁ我は大体のことは知ってるからね!例えば某現代文教師は元ヤンでホントは口が凄く悪いとか、某飼育委員の顧問はショタコンで最近彼氏に振られて元気がないとか、生徒会長様は裏で煙草を吸ってるとか!」 あと他にも、と続けようとする希の腹部にきずながグーパンを入れたため、先程まで饒舌に喋っていた希は静かになった。
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