証言

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「ゲホッ、いきなりグーパンは酷いって!まぁいいけど。で、何を聞きたいの?」 希が咳き込みながらそう聞くと、きずなは一応ごめんと謝り、疑問を投げかけた。 「飼育委員の人間関係について教えて欲しい。」 きずなの言葉を聞くと、希は飼育委員かー、と呟き呆れたような顔で答えた。 「飼育委員はだいたいいつも修羅場だよねー。飼育委員長さんは好きなもの(女子と動物)に囲まれて幸せそうだけど、周りがねぇ。」 ほらやばいじゃん?、と希は二人に問いかける。確かに、百合香と絢芽の激しい罵りあいはやばいとしか言い様がなかった。希の話によれば、あの光景は日常茶飯事らしく、兎人が未だに後ろから刺されてないのは奇跡らしい。 「三年にはもっと女遊び激しい人にいるからね。というか、なんで飼育委員の人間関係?もしかして兎ぐちゃ事件の調査中?」 「正解。じゃあ単刀直入に言うけど飼育委員で兎殺しそうなの誰?」 きずなのざっくりとした問いに希はうーんと、頭をひねらせた。 「殺しそうなのかー。飼育委員ってさ、委員長は動物好きだけど、それ以外が全員委員長目当てだから。動物嫌いなのは三年の鈴里先輩と笹原先輩なんだけどね。」 やっぱりあの二人は怪しい。きずなはそう思ったが口には出さず、次の質問を投げかけた。 「じゃあ、飼育委員でネックレス付けてない人って今日居た?」 「ネックレス?あー、お揃いの。今日は飼育委員全員見たけどネックレス付けてない人なんていなかったよ。」 手がかりは無かった、と時雨ときずなは目を合わせアイコンタクトでこれからの行動を伝える。 「それじゃあ、ありがとう希ちゃん。」 「一応ありがとー。」 二人は希にそう礼を伝え、図書室から去ろうとした。 そのとき、希が何か思い出したかのように、声をあげた。 「あっ!」 二人はその声に反応して振り向いた。 「なにか思い出したの?」 時雨がそう問うと、希が勢いよく喋りはじめた。 「思い出しました!飼育委員と言っていいのか分かんないけど!顧問が!園原先生が無かった!ネックレス!いつも付けてるのに!」 希が早口でまくし立てると、二人はそういえばという顔で驚いた。 「確かにさっき会ったときはついてなかったね。」 「そーいえば確かに。さすが希、有能。」 「えへへー。お褒めにあずかり光栄ですぅー。」 子供のようにはしゃぐきずなと希。その微笑ましい様子を時雨がニコニコしながら見てると、不意に音楽が鳴り、放送が入った。 『本日の下校時間は6時30分です。校内にいる生徒は直ちに下校準備をしてください。』 「もうこんな時間か。さて我は支度をしなければ。」 希は放送を聞いて、図書室の奥へ向かった。 「せんぱいどうしますー?もう調べられませんよー。」 きずなが問いかけると、先程とはまるで違う悪童のような笑みで時雨は答えた。 「おそらく、今日また犯行がおきる。そこを現行犯で捕まえちゃえばいいんだよ。」 時雨の言葉にきずなは珍しく感情をあらわにして驚いた。 「はあ?ちょっと意味分かんないです。せんぱいついに頭沸きました?学校に忍びこむなんて馬鹿な真似私は出来ませんよ?」 「きずなちゃんは勘違いしてるよ。忍びこむんじゃなくて帰らないの。大丈夫、方法はちゃんと知ってるから!」 若干違うフォローを入れて、時雨は笑顔で言う。そんな時雨を見てきずなは唖然とした。 しかし、時雨の様子を見てきずなは渋々といった様子で分かりました、と了承した。 「変な気起こさないでくださいよ。」 「大丈夫!僕、普通の人間の身体構造には興味ないから!」 時雨の余計な一言に、兎人のときとは比べられないほど引いたきずな。しかし、まぁいいと思い、図書室の主とかした同級生に礼をのべた。 「希ー、ありがとー。」 「希ちゃんありがとう!助かったよ。」 時雨ときずなが図書室の奥に向かって言うと、奥から 「どーいたしましてー!」 と元気な声が聞こえた。 「じゃーねー。」 「ばいばーい。」 二人は、教師にバレぬよう居残り(・・・)の準備をするため図書室から出ていった。
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