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「鍵、手に入れたんで兎小屋向かいますかー?」
きずなは鍵を弄びながら時雨に聞いた。
「そうだね。手がかりがあるといいけど。」
不安そうな表情を浮かべた時雨ときずなは、再び兎小屋へと向かった。
「そういえば、園原先生疲れてたのかな。」
兎小屋に向かう途中、時雨がきずなに話しかけた。きずなはたいして興味がないのか、
「さー?」
とぶっきらぼうに答えた。きずなの返答に苦笑いしながらも、時雨は会話を続ける。
「園原先生って、すごく真面目なんだよね。兎小屋だけじゃなくて、水槽とかの掃除もやるんだよ。」
「もしかして、兎小屋の死骸、片付けたのあの先生ですかー。うわー余計なことを。」
人の労力を余計なことと言う、きずなの発言をこらこら、と窘める時雨。まるで、兄妹のようだ。
「まぁ、だから、仕事のし過ぎであんなドジ踏んだんだろうなー、って話。」
時雨がそう話を完結させると、ちょうど兎小屋が見えてきた。
「せんぱい入って探してくださいよー。」
兎小屋の扉の前できずなは渋っていた。兎小屋に入りたくないようだ。
「別にいいけど、どうして入りたくないの?」
「小動物嫌いなんです。見てるとイライラするので。」
心底嫌そうな顔をしながら、きずなは時雨の問いに答えた。
きずなが扉の鍵を開けて、時雨が中に入った。やはり兎たちは奥に固まっている。
兎の死骸などはほとんど片付けられているが、血の匂いはまだ残っていた。
時雨が手がかりを探していると、地面に銀に輝く何かを見つけた。
(これはなんだろう?)
時雨がそれを拾うと、銀に輝くものはネックレスのチェーンだということが分かった。
「きずなちゃん、チェーン見つけたよ!」 時雨は声を弾ませながらきずなに報告した。
「なんでチェーンがあるんですかー?ここってアクセサリー禁止ですよねー。」
「別にそこまで取り締まりされてるわけじゃないからね。飼育委員がうっかり落としたってだけかもよ。」
たった一つの手がかりを、時雨は無くさないようにとズボンのポケットに入れた。
「次どうしますー?」
そう、きずなが時雨に聞いた。時雨はうーん、と一瞬悩んでから、言葉を紡いだ。
「一番最後に兎小屋に入った人間に話を聞こう。」
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