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「ふざけんなよこの売女!!!」
「うるせえよドブス!!!」
3年2組の教室からそんな怒鳴り声が聞こえた。きずなは肩をビクッと震わせ、時雨は手で顔を覆いながらやっぱり、と呟いた。
3年2組には三人の男女がいた。
二人の女子生徒に挟まれ、男子生徒は苦笑いを浮かべながらオロオロしていた。
「絶賛修羅場中だね。」
時雨は、引きつった笑みながら三人の様子を分析していたが、きずなはこの様子にドン引きしていた。
「えー、うわぁー。あの男が飼育委員長ですかー?」
「うん、そうだよ。ちなみに二人の女の子も飼育委員で副委員長たち。」
だから来たくなかったんだ、と時雨はブツブツと文句を垂れながら三人を見ていた。
すると修羅場中の飼育委員長が、助けを求めるかのようにきずなと時雨に向かってきた。
「やっほー時雨くーん!ちょっと助けてほしいなって、その女の子後輩?かわいいね!名前なんていうの?」
「やぁ兎人くん。君にちょっと用があったんだ。あと人の後輩に手を出さないでくれないかな?」
時雨に話しかけたと思えば、きずなに声をかけた飼育委員長、秦山兎人にきずなはドン引きしていた。それに見かねた時雨が今はきずなを自分の後ろにやって庇っているという状況だ。
兎人に逃げられた二人の女子も兎人のあとを追って、扉近くにやってきた。
「あんたたち誰?」
「今大事な話し合いしてるんだけど。」
そうきずなと時雨を睨む女子たちに、兎人は苦笑いを浮かべ、宥めるように話しかけた。
「まあまあ、百合香ちゃんも絢芽ちゃんも落ち着いて。」
つり目で気の強そうな顔立ちの女子が笹原百合香、真ん丸な大きな瞳が特徴的な女子が鈴里絢芽。どちらも兎人に尋常ではない好意を抱いていることは確かだ。兎人は世間一般的に見てもイケメンといえる部類に入るし、話しかけやすい雰囲気を持っている。重度の女好きという欠点はあるが、それを差し引いても女子にモテるだろう。
「助けてよ時雨くーん、俺は二人とも好きって言ってるのに信じてくれないんだ。」
そう言い時雨に抱きつこうとする兎人を、時雨はハラりと交わした。
「また二股したのかい?兎人くんは学習しないなぁ。」
時雨は冷ややかな目で兎人を見るが、兎人はその視線を気にしないようだった。
「俺は女の子平等に愛を注いでいるんだよ!俺は君の後ろの後輩ちゃんも愛してあげれるよ!」
「気持ち悪い。」
時雨の後ろできずながそう呟いた。
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