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おばちゃんの話していた事は、意外とタイムリーだったらしい。普段は小さな子供が遊ぶだけの、基本的に閑静な公園だ。
だが、今日は大人の人だかりが出来ていた。近くに通りかかった人も何事かと興味津々で寄って行く。規制線が張られている。
パトカーが数台。どうやら遺体を運ぶ専用の車も来ているようだった。
僕は自転車から降りた。その人達の間を通り抜けて行く。意外と人だかりの密集度は高かった。
どこかで早い蝉が元気よく鳴いている。僅かに残された最後の時間を謳歌するように。
「いやあ、いつの時代の人なんだろうな……」
「だいぶ昔に埋められて、よく今まで見つからなかったものだよ」
警察官が汗を流して、地面に横たわる〝それ〟についてお互いに話していた。僕は黙って近付いて、〝それ〟を見下ろす。大きな木の根元は、深い穴が空いていた。
「いやあ、仏さんが着てる物から推察するに戦前位じゃないか?よく綺麗にここまで残ってたなあ」
随分と古い制服を着ていた。泥だらけになってしまっているけど、名札だってまだ読める。通学バックも埋まっていたらしく、隣に置いてある。中に入っていた教科書は、身元を確かめる為かご丁寧に外に並べられていた。
「『河野』……駄目だ。下の名前が汚れて読めないな。鑑識に回せ。行方不明者リストを当たるか」
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