◆もし、次に目が覚めた時、生まれ変わっていたとしたら

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◆もし、次に目が覚めた時、生まれ変わっていたとしたら

 仮に、あなたが今、死にたくて仕方ないとする。  理由はそれぞれあるだろう。  とにかくもう、悩むのも恨むのも、生きる事にも疲れたのだ。  そして以前から調べておいた通り、なるべく他人にも家族にも見つからず、迷惑もかけない方法で自殺をしようと秘かに準備する。  あなたはそれを今夜、ついに、実行した。  翌朝目が覚めると、いつもの通り、自分のベッドや布団の中だった。  昨日確かに、自殺したはずなのに、だ。  さてそこであなたは考える。  昨夜の事は、夢や妄想だったのかも、と。  実はそうじゃない。  あなたには価値がある、まだ使命を果たしていない。  だから神様が、もう一度、あなたを復活させてくれたのだ。  あなたが一度死んだ事は、神様とあなた自身しか知らない。  昨日までの続きのようで、まったく違う自分として、もう一度生まれ変わったのだ。  さあ、冷静になって考えてみよう。  本当にあなたが死ぬ必要があったのか?  再び生きるチャンスが与えられたら、この人生をどう使う? 「こんなチャンスなんてもらったって、ありがた迷惑だし、昨夜と同じ事をして、もう一回死ぬだけ。  神様、もう余計な事しないでね!」  まあそれも選択肢の一つだろう。  でも、最後にもう一度だけ真剣に考えてみて。  もし誰かに恨みがあるのなら、あなたが死ぬ前に、その相手に対して、本当に言いたい事は言えたのか?  どうせ死ぬのなら、学校でも仕事先でも、大勢の前で相手がしてきた事を訴え、糾弾してからだって良いのだ。  こちらからの身体的な暴力は絶対にいけないが、今はネットという武器もある。  証拠さえ残しておけば、あなただけが一人でひっそりと死を選ぶ必要はまずない。  後述もするが、証拠は携帯の画面のスクリーンショットでも、音声録音でも、きちんと日付と出来事が記された日記でも良いのだ。  これは、実際に裁判になった時にも、とても役に立つ。  理不尽な仕打ちは、社会的に制裁されるべきだという事も大いにある。  あなたをそこまで追い詰めるような環境や人間たちは、今後他の誰かを同じように犠牲にするかもしれないからだ。  誰かが自殺することで初めて公になり、問題提起される事も多いが、そういう人ほど守るべき対象であり、犠牲になるべきではない、優しく責任感の強い人だと思うのだ。  おそらく、あなたはそういう人なのだろう。  だからこそ、死を選ばずに、せめて真実を残しておいてほしい。  そんな風に、社会的な事件として大事にしたくない、騒ぎを起こして、家族などに迷惑をかけたくないという場合。  そこが学校でも職場でも、あなたが生きるはずだった、これから先の長い人生をすべて捨ててしまう前に、一定期間『休む』、完全に『辞める』という選択肢はなかったのだろうか?  ちなみに今は、退職の連絡を代わりに行ってくれる業者もある。  もし生きるのが辛いほど、そこにいる事が苦痛なら、その職場で働くのを止めて、別のどこかで生きてみるのはどうだろう? (可能ならば、ご家族に相談した上で。)  どうせ死ぬのなら、あり得ないくらい『夢』としてしか考えられなかった職業にチャレンジしてからでも良いのではないか?  いっそ子供の頃になりたかった職業の、三番目くらいまで、できるかどうか試してみてから死ぬのもいいんじゃないだろうか?  意外な才能が開花して、道が開けるかもしれない。  それでダメなら、その時改めてもう一度死んでみればよい。  家庭や学校での問題の場合、担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや保険の先生、校長先生など、一人だけでなくあえて複数の教師や大人に相談するのも良いだろう。  調べてみれば、教育委員会や、あなたが住んでいる地域の相談窓口など、学校以外でも複数の可能性が見つかるはずだ。  残念な事に、いじめや虐待の事実がもみ消されて、子供だけが死を選ばなければならなかったような事件も、事実起きている。  本来、子供を守るべき大人の方が「知らなかった」と言い逃れする事など出来ないよう、しっかりと証拠とそのコピーを残しておき、助けを求める時は、複数の相手に訴えよう。  もし家庭内で虐待や暴力があるのなら、交番や警察などでも、出来るだけ多くの人に相談してみよう。  そういった相談専用のラインや、サイトもある。  子供の話だからと言って、軽く扱わないでくれる、信じてあなたを大事にしてくれる人を見つけよう。  両親の虐待の件で交番に相談に行ったのに、信じてもらえず、連れて帰られた後で親に暴力を受けたという事例もあるのだ。  失礼などとは思わずに、あなたと相性の良い相手、直観的に信じられる相手に出会えるまで、何人かの人に相談したって良いのだ。  例えばあなたが女の子なら、「女性の方が話やすいから」という理由で、他の誰かに代わってもらっても大丈夫。  信頼できそうな相手を探すことは、悪い事ではない。  運悪く、最初に相談した人間があなたに対して懐疑的だったり、否定的な物の言い方だったとしても、それであなたの言い分が全世界から無視されたわけではないのだ。  もちろん、あなたの家族が暴力をふるったりせず、きちんと話を聞いてくれる人たちならば、最初は怖いかもしれないが、どんな悩みがあるのか、正直に話してみるのも良いだろう。  いじめや嫌がらせは、ある程度は誰もが目にする現実だ。  だが、それがどれほどの問題なのかは、本人にしか解らない。  数日したら何でもなかったように仲直りできるケンカのようなレベルなのか、死を選ばざるを得ない程に苦しめられているものなのかは、周囲の誰も正確には理解できないのだ。  あなたがどれほど苦しんでいるのか、自分の正直な気持ちや、状態を、どこかに訴える必要がある。  ラインやメールでの嫌がらせや、いじめが辛かったのだとすれば、自分を破壊する前に、スマホや携帯の方を壊すか解約するか、無くしたという事にして、数か月電源を切りっぱなしにしたって良いのだ。  ネット上で何か嫌がらせをされた場合は、スクリーンショットなどで、日付や時間を含めて、しっかり証拠も残しておくこと。  会社での不合理な叱責やハラスメントなども、できれば音声や動画で証拠を残しておこう。  もし本当に死ぬのであっても、原因になった事実はきちんと残しておくべきだし、証拠があれば、学校も会社も親も、言い逃れはできない。  あなた一人が背負って死ぬべき事なのか、世間に問題提起できる、自分の使命として起きた出来事のきっかけなのか、それを生きているあなたはまだ選べるのだ。  今も同じように苦しんでいる誰かを、救える力があなたにはあるのかもしれない。ひょっとしたら、世界や世間のルールや法律を変える事だってあるのかもしれない。  早い話が、あなたが本当に自殺する前に、やれる事はまだあるのかも知れないし、やってからでも遅くはないという事だ。  もし、生まれ変わって、今はもう『なりたい自分』になっているんだとしたら、あなたはこれからの人生をどう生きるだろう?  どうせいつかは死ぬのなら、相手や世間に対して本当の気持ちを思い切り叫んでみてからでも良いのではないか?  それでもダメなら、その時もう一度考えてみればいい。  あなたの命は、今もこれから死ぬまでのずっと先までも、あなたのものなのだから。
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