◆ところで、私があなたの自殺を止めないとしたら、こんな場合

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◆ところで、私があなたの自殺を止めないとしたら、こんな場合

 とても当たり前の事を言うようだが、念のため。  自殺でもしないと、無差別に他人を殺してしまいそうだとか、子供や動物など、自分よりもはるかに弱くて罪のない生命を傷つけたり虐待してしまいそうだとか、その他八つ当たり的な酷い犯罪を起こしてしまいそうな場合。  そういう死や暴力的な衝動は、何があっても自分の中だけで納めていだだきたい。  とはいえ、いくら自分が『死にたい』状況でも、他人から『どうぞ』と言われると何だか悔しいというか、ショックなのが人間でもある。  そういう訳で、もしまだ何も犯罪的な事を起こしていないのなら、あなた自身のためにも、気分を切り替えて、自分自身の本当の望みや目的を考え直して、今後は幸せな人生を送ってもらいたい。  なぜなら、改めて後述もするが、どんな理由や辛い過去があろうとも、無関係な人間や動植物を巻き込んだ死に方は、あなたの命の尊厳を最も価値のない所まで貶めるからだ。  怒りの矛先を向ける対象が無差別になればなるほど、あなたの発信したかったメッセージの正当性は失われる。  そのうえ、事件を起こせば、あなたが動かしたかった方向性とは逆の方向に、世論や世界は動く。  たとえば今年もアメリカで『白人至上主義者』の無差別な銃乱射事件が数多く発生しているが、彼ら『白人至上主義者』以外の人間にとっては、罪もない移民や有色人種の方がよほど善良な人間で、守るべき対象だというのが明白だ。  思い込みによって成り立っている殺意が、自分自身では間違っていると認識できず、制御もできなくなって事件になる事もあるのだ。  繰り返しになるが、自分の命を絶ってまで訴えたいことや不満がある場合は、まず現実的な証拠を集めて、世間に公表してみてほしい。  冷静に考えてみれば、自分の怒りや憤り、悲しみの原因は、まったく別のところにある事にも気づけるかもしれない。  そういう訳で、もう一つの場合。  他者への八つ当たりではなく、明確に原因となるような非がある、確実に恨んでいる相手を殺して、自分も死ぬ、という場合。  この場合も、自殺を止めないというよりは、恨んでいる相手に対して何らかの犯罪行為を行うこと自体を思いとどまって欲しいと思う。  なぜかと言うと、仮に百パーセント相手が悪いとしても、犯罪を犯した時点で、立場が逆転してしまうからだ。  例えば相手が何人もの異性を騙してきた結婚詐欺師で、あなたのお金も、人生の貴重な時間をも無駄に奪い取られてきた場合でも、あなたが手を下した時点で、世間の目は、「そもそもあなたが、そういう精神的に問題のある人間だから騙されたんだ」という風に向く。  相手が精神的、身体的に虐待し続けてきた親であっても、あなたが手を出せば、「あなたが暴力的な性格だから、親も厳しく、しつける他なかったのだろう」と判断されるかもしれない。  もちろん、相手の暴力からの正当防衛などで、突発的に反撃するしかなかった等、致し方ない場合はこの限りではない。  その場合はなおさら、あなたが罪を背負って死ぬ事はないと思う。  今まで苦しんできたのだから、落ち着いて救いを求めて欲しい。  相手が法に触れる行為をしているのなら、安全な距離を置いたうえで、出来れば冷静に証拠を揃えて、警察や保護施設に力を借りるのが得策だ。  緊急の場合は、まず、そこから逃げ出して、自分の命と心を守ろう。  証拠は後からでも構わない。  日記などは、真実ならば、後から思い出して書いたものでも証拠になる。  昨今のニュースでも実際にあったが、学校や警察や保護施設の連絡ミスなどで、かえって問題が悪化した場合もある。  不安なら、直観的に信用できる相手に出会えるまで、何か所か複数の団体に相談してみてほしい。  ただし、保護を求めるには、出来るだけ公的な施設である事。  政府の公認の施設でなくても、ニュースなどで紹介されたような、利用者の満足度の高い、女性専用のシェルターもある。  ぜひ口コミや、ネットの情報でしっかりと調べてみてほしい。  SNSなどで親身になって相談にのってくれる個人も大勢いるだろうが、中には犯罪目的で性別や人格を偽っている人間もいる。  特に、あなたが女性や子供だった場合、本当に気を付けていただきたい。  当たり前の事を書いているが、自分の命もどうでも良くなるほど悲しんでいたり、無力感を感じている時には、当たり前の事が何なのか解らなくなったりするものだ。  そんな時ほど、安易に人を信じすぎず、冷静に判断してほしい。  自殺する事で、世間に訴える事の出来る案件もあるだろうが、そういう人ほど、やはり生きていて欲しかったと思う。  真面目で、責任感が強く、優しい人ほど、全てを背負ってしまいがちなのだ。  再度繰り返しになるが、もし、犯罪に巻き込まれていたり、責任を転嫁させられていたり、脅されているのなら、真実をマスコミやネットで世間に訴えてからでも、遅くはないのではないだろうか? (ただし、相手の実名や顔写真は安易にネットに掲載しないこと。いつでも公開できるように確かな証拠を残して置くことが最も重要な点だ。)  家族や自分の会社に保険金を残したい、自分が死ぬ事でしか救いの道がないと思われる場合でも、もし大事な人がいるのなら、正直に相談してみてからでも良いのではないだろうか。  正直者には、生きて幸せになって欲しいのだ。  そう考える人間も、同じように苦しんでいる人間も、きっと思っている以上にたくさんいるはずだから。  次の章からは、そもそもなぜ、自分が死を望む性格になったのか、そしてそういう思いを回避するにはどういう考え方をすれば良いのかを、私自身の過去などを例にして、考えてみようと思う。  参考になれば幸いである。
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