真夜中の逢瀬

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真夜中の逢瀬

首筋(くびすじ)に触れるその人の手は、いつもひんやりとしていた。透き通っている白い腕は儚げで弱々しいとさえ思えるのに、此方(こちら)に触れてくる感触は、意外にも力強いのだと知っている。その人は真夏の夜に火照(ほて)った此方の身体を冷ますように、暫く両手を首筋に当てた後、そのまま手を両頬へと移動させ、ゆっくりと冷たい唇を此方の唇に押し付けてくる。そんなある種の儀式めいた行為が、真夜中の逢瀬が始まる合図なのだった。
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