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朝のホームルームが終わって1時限目の教科を準備していると教卓にいた担任教諭の田中から代利子は呼ばれた。
「本吉さん、10時に区役所の方がみえるから1限が終わったら職員室に」
「はい……」
返事をして教卓から離れると代利子は「はぁ」とため息を吐く。
30代(らしい)田中は物腰柔らかな女性で、穏やかな笑顔で入学して間もない代利子にも親身に寄り添ってくれている。しかし代利子の本音は田中を傷つけるかもしれない、そう考えて呑み込んでしまい疲れる。
「天涯孤独」というものは代利子の想像をはるかに越えた面倒だった。
まだ未成年の代利子はこれからどうするのか、大人に守られなければ生きていけないのに守られるべき場所が不明確である。それを学校、行政の担当者と話し合って決めなければいけない。
(疲れるなぁ……)
どうにでもなれ、投げやりになりそうになることもしばしば。
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