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代利子には決断の時が迫っていた。
もう2週間、まだ2週間、四十九日はまだ先なのに手続き等々の関係で代利子は決めなければいけない。一刻一刻と近づく現実が虚しかった。
9時53分、代利子が職員室に入ると田中は自分の席でデスクワークをしていた。
「失礼します」
幼い頃から教わっているように礼儀正しく職員室に入り田中の席に近づいた。ノートパソコンの横に栄養ドリンクの空き瓶があるのがわかると何故だか代利子は申し訳なくなってしまう。代利子の罪悪感を知らずに田中は気丈に笑顔を振る舞う。
「本吉さん、ちょっと早いけどもういらしてるから行きましょう」
「はい」
田中は少し伸びをして立ち上がって隣接する応接室に向かって歩きだす。代利子は一歩下がって田中についていく。
少し目線をずらすと田中のふくらはぎにある青タンがストッキング越しにみえた。
(先生も疲れてるのかな……ぶつけてる……)
数メートル先にある扉を田中がノックして入室する。代利子も続き頭をさげて「失礼します」と言いながら入室した。
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