君を見つけた

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「とりあえずさ、ここから始めさせてよ」 ふたりが完全にいなくなったことを確認して、智くんが口を開く。 「.......智くん」 「会場で見つけたとき、ここしかないって思ったんだ」 「.......うん」 「ずっとずっと好きだった。忘れられなかった」 真剣な瞳で見られて、紡がれる言葉。 「.......ありがとう」 ドキドキが止まらなくて、心臓の高鳴りは最高潮。 「まだ、ちゃんと好きになれるかわからないけど、いまドキドキしてるのはたしかだよ」 「夢みたいだ。一生会えないと思ってたから」 あたしの手をぎゅっと握る。 「あの頃から好きって思ってくれてたんだね?」 「うん。夫婦ってからかわれてから意識しちゃってさ。完全に避けられてたから話しかける勇気もなく卒業しちゃったけど」 「.......そっか。ごめんね、嫌いなんて言っちゃって」 あの当時のあたしは、ただ恥ずかしくて仕方なくて。 ──渡辺くんなんて、大嫌いだから!夫婦なんていわないで! って、教室で叫んだっけな。 彼のこと、本当に嫌いになろうと言い聞かせてた気もする。 「もう、次に言われるのは好きって言葉のはずだから、水に流すよ」 彼の言葉に2人で顔を見合わせて笑った。 まだまだ、これからのあたしたち。 「これから、よろしく」 いつか、きっと、彼のことを好きになる。 人混みから逃れた静寂のなか、ひとつの予感を胸に抱いた。
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