彼が求める『ひんやり』は

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「ひ、冷え性……なので」  そう答えながら、意識しているのは自分だけだったと思うと、さっき松井くんのことを『いやらしい』だなんて言った自分の方が、よほど自意識過剰だったと恥ずかしくなってきた。 「ぁ……あの……もう、いいですか」  私の手は、いまだ松井くんに握られたままだった。もうすっかり冷気は松井くんの手に吸い取られ、右手だけが温かくなっている。 「うん。あんがとねー」  松井くんはニコッと笑うと、何事もなかったかのように去っていった。呆気にとられながら逞しい背中を見送っていた私を、松井くんが振り返った。 「また、よろしく♪」  ハッとすると本を手に取って開き、視線を落とした。さっきの続きを読み始めようとするのに……本の内容が、一行も頭に入ってこなかった。
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