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こうなったら、正直に告白するしかない。
『私は、ヒヤロンではなくなりました。だから、松井くんに手を求めてもらう資格はありません』
毎晩、心の中で繰り返し練習してきたじゃない。
松井くんが曇りのない眼で見つめてくる。私の喉がゴクッと上下に動いた。
「ま、松井……くん……」
「ん?」
首を横に傾けられて、心臓がボンッと焦げる音がした。
「ご、ごめんなさーい!!」
スポーツテストの100メートル走でだって出せなかったほどのスピードで廊下を走り抜け、松井くんから逃げ去る。今なら、自己新記録間違いない。
なんて私は卑怯なの……
これまで、どんなに苦手なことも真正面から向き合って、努力と練習で乗り越えてきたはずなのに。逃げることしか、出来ないなんて。
どうして松井くんには、正直に話せないんだろう。私はいったい、どうしちゃったんだろう。
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