シー・ラブズ・ユー? ㉕

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シー・ラブズ・ユー? ㉕

 俺が女性でも扱いやすいギターを探していると、ふいに涼歌が「あっ」と声をあげた。 「どうした?」 「この曲……知ってる」  流れていたのは、エマーソン・レイク&パーマーの曲だった。 「『展覧会の絵』だな。プログレッシブ・ロックの名盤だ」 「ムソルグスキーでしょ。これもロックなの?」 「ああ。クラシック音楽をロック風にアレンジしたアルバムで、当時はこう言う毛色の変わった物が流行していたんだ」  俺が説明すると、涼歌は興味深げにスピーカーを見つめた。意外なところで接点が見つかるものだな、と俺は愉快になった。 「ユキヤ君のバンドでドラムやってる人が『キエフ君』って言うんだけど、この曲の『キエフの大門』っていう部分が大好きなんだって」 「なるほど、それで『キエフ君』なのか。どうりで変わったあだ名だと思った」  俺の脳裏に、ファミレスでのユキヤとキエフのやり取りが甦った。 「そう言えば……彩音さんがストーカーに狙われてるって話は、本当なのか」  いきなり話の風向きが変わり、涼歌は目を瞬いた。 「……ええ、そうだけど。どこで聞いたの?」 「キエフ君からだ。かなり心配しているようだった」 「……そうね。彩音はユキヤ君に心配して欲しいようだけど、巻き込みたくないって言う気持ちもあって、なかなか言い出せないみたい」 「ユキヤ君はもう知ってるよ。驚いてるようだった」  涼歌は目を瞠った。なぜそんなことまで、といった表情だった。俺はユキヤと個人的に話をしたこと、そこへキエフが現れてストーカーの話をしたことなどをかいつまんで話した。もちろん、俺とユキヤとの会話の内容に関しては、あえて伏せたままにしておいた。 「……そうだったの。でも、一応は心配してくれたんだ、ユキヤ君」  涼歌がほっとしたように言った。彩音はユキヤに好意を抱いているが、ユキヤの態度がいまいちはっきりしないのでやきもきしている、と言ったところか。俺がそう口にすると、涼歌は「うーん」と言って小首を傾げた。 「その通りだけど、私はユキヤ君も彩音の事、嫌いじゃないと思うんだ。……ただ、ユキヤくんには昔、色々あったみたいで彼女を作るのにも慎重になってるみたいなの」  それはそうだろう、と俺は思った。ユキヤの兄の事件を考えれば、人付き合いにも慎重になろうという物だ。特に女性に対しては。
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