シー・ラブズ・ユー? ㉖

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シー・ラブズ・ユー? ㉖

「でもね、彩音はユキヤ君の昔の事も知ってるみたいだし、何があっても気持ちは変わらないって言ってる。あとはユキヤ君次第なんだけど……」 「肝心のユキヤ君の態度が煮えきらないので、あきらめきれないんだな」  涼歌がこくんと頷いた。俺はキエフからストーカーの事を聞かされた時のユキヤの表情を思い返した。ユキヤは明らかに動揺を見せていた。女の子が事件に巻き込まれるかもしれないという話が、ユキヤの暗い記憶の何かを刺激したと考えて間違いなさそうだった。 「それにね、キエフ君も彩音に好意を持ってるっぽいんだよね。だから……」 「くっつくなら早くくっつけ、でないとあきらめきれない……ってわけか」 「たぶんね。キエフ君にとっては彩音もユキヤ君も同じように大事なはずだから」  俺は腕組みをし、うーんと唸った。だからバンド内のすったもんだは困るのだ。 「ストーカーの目星はついてるのか?それとも、全く知らない人間?」 「よくわからないけど、知らない男だって。ネットで彩音の写真を見て気に入ったみたい」 「怪しい人物に付け回されたことはあるみたい。なんでも顔を完全に隠していて、逆に目立ってたって」 「警察には言ったのか?」俺が尋ねると、涼歌は黙ってかぶりを振った。 「今のところ、言ってないみたい。でも、電話やメールがこれ以上、頻繁に来るようだったら、届けを出すって」 「そうか。そうなるとあんまりユキヤ君と親しくするのも考え物だな。ストーカーが彩音さんに執着するあまり、彼氏に嫉妬の矛先を向けてくることも考えられる」 「そうなの。だからユキヤくんはもちろん、キエフ君だって安全じゃないと思う」  俺はため息をついた。女の子が身の危険にさらされるという話は俺にとっても他人ごとではない。だからと言って無闇に深入りするのは、剣呑だとも思った。 「まあ、様子を見ることだな。危ないと思ったらすぐ警察に行ったほうがいい」 「相談に乗ってくれる?」  涼歌が身を乗り出してきた。俺は不承不承、頷いた。 「相談しなくちゃいけないような事態にならないことを祈ってるよ」 「もちろん、そうだけど。……ギター、良さそうなのあった?」 「ああ。これなんかどうだろう。ちょっと古いが、女の子にも弾きやすいはずだ」  俺は赤いストラトキャスターを手渡した。涼歌は「重ーい」とふざけた口調で言い、ストラップを肩にかけた。俺はネックを握った姿を見て、思わず唸った。 「意外なくらい、様になってるな。エアギターなら十分、デビューできるぜ」  涼歌は「本当?」と嬉しそうに言い、弦をかき鳴らす真似をした。 「ギュイ~ン……なんちゃって」
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