狼少女。

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狼少女。

ざっざっ、と走りたい。 いつもながらに伸びやかに、草木をかき分け走りたい。誰も、私を知らない。私はこの大自然を愛するために産まれてきた。 ただ思うことは、誰かに突き動かされる思いがないこと。狼少女は、誰か、という人の存在を知らなかった。自分の顔も知らない。この少女に、与えられたもの、それは、生きることへの衝動だと思う。ただ、突き動かされるままに、自由に生きることは、彼女の人生そのものであり、彼女自身だ。 ただ、頭が最近むずむずした。本能に打ち勝てることのできることは、本当に素晴らしいと思うことは、私達人類が考えれば良いのであり、狼少女が考えなくともよい。理性なんて、狼少女からみると、くだらない嘘芝居に見えた。 よく、理性で抑える、というが、それは、人間のあるべき姿だ。狼少女は、自分を愛した。欲を好むその姿は、聖獣のようだ。神々しかった。 見えるのは、自分の手や足首、傷は、彼女にとってのファッションであった。ただただ自分を愛する姿は、醜かった。しかし、狼少女は、うっうっと言って、足についた生傷を魅せた。そうして、年頃の狼少女は、夜泣きした。う、わぉーん。おーん、おーん。 可愛らしい狼さん。 ある日、狼少女は、初めて人間を見た。自分を見て微笑みをくれた、生物学者は、アーサーという。狼少女は16歳。わからないが嫌な気持ちに、ならなかった。そして、陰部をまさぐりはじめる。 さすがに生物学者だ。アーサーは、こらこら、というと、にっこりと微笑み、街に出掛ける準備をした。檻しかないんだ、すまんよ。さ、入った、入った。すとん、と檻に倒れこむ姿は、なでやすそうな、体だった。尖った爪には、人間特有の恐ろしさがなかった。爪には、霊力が宿る。が、狼少女の爪は可愛らしかった。いわゆる、相手を攻撃するものではなく、伸ばしぱなしな感じが映りるだけ。アーサーは考えた。どうすれば、この子が成長するのかを。
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