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「ふう。私をここから出してくれてありがとう。やっぱり外の空気はいい」
少年の目の前には、見た目でそれとわかる、いわゆるヒーローがいた。
さっきの人形が大きくなり、普通の大人よりは少し身長が高く、人間と同じ仕草をする姿になっていた。
そして、人形のときより少し大き目の声で話す。微細な動きでその者が話しているというのがわかる。
「さて、これからあの怪物の相手をしてくる。では」
そう言って、ヒーローは、飛び去っていった。
遠ざかることでその姿がだんだんと小さくなっていく、ようにも見えなかった。
そして、怪獣のいるところの近くに降り立った。
そのときには、それと同じぐらいの背たけになっていた。巨大化したみたいだ。
それから、怪獣に向かって身構えた。
怪獣のほうも、ヒーローに対し、闘争心をあらわにし出した。
やがて両者は、接近し、格闘を始めた。
ヒーローは相手に対し、パンチ、チョップ、キックなどの技を繰り出した。
怪獣も、手を振り出したり、ぶつかったり、かみついたりといった攻撃を続けた。
両者はほぼ互角の戦いを演じていた。いや、ヒーローのほうが若干、優勢か。
そののち、怪獣のほうがふらつき出したが、それでもヒーローは容赦なく攻撃を続けた。
やがて怪獣は地面に倒れ、そして動かなくなった。
ヒーローはそれを見届けると、飛び上がり、去っていった。
その後、ヒーローは、等身大に戻り、再び少年の前にやってきた。
「すごいや、ありがとう。だけど、あの怪獣、やっつけちゃったの?」
少年の疑問に、ヒーローは答えた。
「いや、まだ息がある。ふらふらにして動けなくしただけだ。あのあと人間達がどこかへ運び出し、それからどうするか、協議して実行に移すだろう」
少年はとりあえず納得した。
「さて私は、行かなければならない」
「行くって、どこへ?」
「他にも、困っていて、私を必要としている人々がいるはずだ。そういった者達を探して助けてあげるつもりだ。もしまた君に困ったことが起こったら、今度は別のヒーローを、あの自動販売機から出してあげればいい。それじゃあ」
言い終わると、ヒーローは、どこへともなく飛んでいった。そして見えなくなった。
少年は、また自動販売機のところに来て、眺めた。
今度また怪獣が現われたりしたとき、どのヒーローを呼んだらいいだろうか。
今回は120円でいけたけど・・・。
並んでいる人形の下にある数字、右から、10$、100$、1000$、10000$・・・。
今後次々と難題が降りかかってきたら、いくら金がかかるんだ・・・。
―――終わり―――
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