1ドルヒーロー

3/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「ふう。私をここから出してくれてありがとう。やっぱり外の空気はいい」 少年の目の前には、見た目でそれとわかる、いわゆるヒーローがいた。 さっきの人形が大きくなり、普通の大人よりは少し身長が高く、人間と同じ仕草をする姿になっていた。 そして、人形のときより少し大き目の声で話す。微細な動きでその者が話しているというのがわかる。 「さて、これからあの怪物の相手をしてくる。では」 そう言って、ヒーローは、飛び去っていった。 遠ざかることでその姿がだんだんと小さくなっていく、ようにも見えなかった。 そして、怪獣のいるところの近くに降り立った。 そのときには、それと同じぐらいの背たけになっていた。巨大化したみたいだ。 それから、怪獣に向かって身構えた。 怪獣のほうも、ヒーローに対し、闘争心をあらわにし出した。 やがて両者は、接近し、格闘を始めた。 ヒーローは相手に対し、パンチ、チョップ、キックなどの技を繰り出した。 怪獣も、手を振り出したり、ぶつかったり、かみついたりといった攻撃を続けた。 両者はほぼ互角の戦いを演じていた。いや、ヒーローのほうが若干、優勢か。 そののち、怪獣のほうがふらつき出したが、それでもヒーローは容赦なく攻撃を続けた。 やがて怪獣は地面に倒れ、そして動かなくなった。 ヒーローはそれを見届けると、飛び上がり、去っていった。 その後、ヒーローは、等身大に戻り、再び少年の前にやってきた。 「すごいや、ありがとう。だけど、あの怪獣、やっつけちゃったの?」 少年の疑問に、ヒーローは答えた。 「いや、まだ息がある。ふらふらにして動けなくしただけだ。あのあと人間達がどこかへ運び出し、それからどうするか、協議して実行に移すだろう」 少年はとりあえず納得した。 「さて私は、行かなければならない」 「行くって、どこへ?」 「他にも、困っていて、私を必要としている人々がいるはずだ。そういった者達を探して助けてあげるつもりだ。もしまた君に困ったことが起こったら、今度は別のヒーローを、あの自動販売機から出してあげればいい。それじゃあ」 言い終わると、ヒーローは、どこへともなく飛んでいった。そして見えなくなった。 少年は、また自動販売機のところに来て、眺めた。 今度また怪獣が現われたりしたとき、どのヒーローを呼んだらいいだろうか。 今回は120円でいけたけど・・・。 並んでいる人形の下にある数字、右から、10$、100$、1000$、10000$・・・。 今後次々と難題が降りかかってきたら、いくら金がかかるんだ・・・。 ―――終わり―――
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!