1ドルヒーロー

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1ドルヒーロー

ここに、1人の少年がいる。 日本で生まれ、日本で育ち、日本で暮らしている、ごく普通の少年。 今後も、普通に日本で生きていくであろう。 怪獣が現われるまでは。 そう、怪獣が出現したのである。 次々と壊されていく建物。 逃げ惑う人々。 このあと、自衛隊の戦闘機が攻撃しにくるのであろうか。 あるいは、怪獣退治を専門とする防衛隊は存在するのだろうか。 そのようなことを考えつつ、少年は、逃げるでもなく、怪獣の行動をじっくり眺めるでもなく、どちらともとれないような足取りで歩いていた。 ふとそのとき、声がした。 「私を出してくれないか」 突然聞こえた声のほうへ目を向けると、そこには・・・。 自動販売機があった。 最初はそのあたりに声の主がいたとは思えず、首をかしげつつ、立ち去ろうとした。 だが、また声がした。同じようなセリフで。 それにより、その自動販売機のところから声がしたと確信を持ち、そして、そのほうへ近付いていった。 近くまできて、中にあるものを見た。 人形が数体、ぶら下がっていた。 人形の自動販売機なのだろうか。 いや、人形というより・・・。 「ここから出してくれないか」 今まで聞こえ続けていた声は、それらの人形から発せられている、そんな気がしていた。 約10cmほどの正義のヒーローのような人形が5体、そのいちばん右端にあるもっとも小柄なのが、ずっと話し続けていたみたいだ。 動作はしていなく静止しているが、声だけはしていて、生きているようで、もはや人形とは思えなさそうだ。 「今でかい怪物が暴れていて大変だ。だから私がやっつけてあげよう」 少年は返答した。 「だけとそんな小さな体で?」 声の主が答える。 「いや、ここから出たら、もっとでかくなって戦えるようになる。君がお金を入れてボタンを押したら、ここから出られるんだ」 「じゃあ、出してあげよう」 少年は財布を取り出してお金を出そうとした。 「それで、いくら入れるの?」 「我々が今いるところの下に数字が書いてあるだろ。その額だけ入れればいい」 見ると、それぞれのヒーローの人形の下に数字が書かれている。左から順番にだんだん数字が小さくなっていって、いちばん右の声の主のところがもっとも小さい数字である。 「どの人形がいいの?」 「どれでもいい。数字が大きいほど強い。私はいちばん小さいがな」 少年は、その小さいヒーローのところの数字を見た。 「1$」と書かれている。 1円か。それだけでいいんだと考え、財布から1円玉を取り出した。 そしてお金を入れようとしつつ、もう一度その数字を見てみた。 「1$」・・・え、「$」?ということは・・・1ドル?
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