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レイトが扉に手をかけた時、ダンテがそれを制するように彼の腕を掴む。まだ、彼がどれだけの力を持っているのか測りかねているダンテ。少年を一人でドラゴンのいる場所に行かせるわけには行かなかったのだ。
「何だよ」
「子供一人でドラゴンのいる場所に行かせるわけにはいかない」
「ダンテさん、その手を離して下さい。レイト様が怒る前に……」
ダンテには、ルーナが何故この少年に全幅の信頼を寄せるのか分からなかった。一人でドラゴンがいる場所へと行こうとしている少年を何故彼女は止めようともしないのか。
「ルーナさん、何故止めないんだ! 死ぬぞ!」
「問題ありません。私達三人で行くよりも、彼一人の方が遥かに安全です。私達は彼の足枷になりかねない。だからここで待っている方が良いんです」
「何を言って……っ」
いるんだとダンテは言うはずだった。だがその瞬間、突如息苦しさに襲われる。何か、自分に外から圧力がかかっているかのような。
「な、なんだ……息が……」
「レイト様。あまり魔力を放出しないで下さい。私達まで気絶してしまいます」
「あ、悪い。あんまり子供子供言うからさ」
レイトが言い終わると、ダンテを襲っていた息苦しさが無くなる。掴んでいた腕を離さずにいられず、その場に崩れ落ちた。
「何が……」
「レイト様が魔力を放出したんです。先程も言いましたが、あまり子供とか少年とか言わないで下さい。本気で怒りますので」
ダンテもエクシアも頷く他なかった。そして何より、彼の凄まじい魔力量に驚かされた。体外に魔力を放出して息苦しさを感じるなど生まれて初めての経験だった。
「んじゃ、行ってくる。ルーナ、あとは任せる」
「はい、お気を付けて」
レイトがダンテの部屋から出て行った後、残された三人は暫し無言だった。とは言っても、ルーナは依頼書の内容を今一度確認して調書を取っている。ダンテとエクシアは、何をしたら良いのか分からないと言った表情をしている。
「ルーナさん」
「レイト様の事でしょうか?」
口を開いたエクシアが、何を聞きたいのかルーナにはすぐに分かった。
「彼は何者なのですか?」
「何者……」
ルーナは、書き込んでいた調書の手を止めて考える素振りを見せた。エクシアが緊張した面持ちで彼女の口から出される答えを待つ。
「レイト様はレイト様です。他の何者でもありませんよ?」
「待ってくれ。我々が望んだ答えがそうではない事などあなたも分かっている筈だ。彼が先程見せたあの膨大な魔力の事だと」
「私の口から、あなた方が望む答えを言うつもりは無いですよ。もし、何か聞きたいのであれば本人に直接聞いてください」
ダンテとエクシアの質問に、ルーナが答える事は無かった。本人の許可無しに話す事は出来ないというのもあったが、何よりその本人が力をひけらかす事を望まないのだから。
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