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ここで、レイトはふと気がついた事があった。龍神族と会う事は出来たが、その龍神族に従うドラゴンが居ないのだ。文献によれば、龍神族は必ずドラゴンを一頭以上付き従えていると書いてあった。
「ドラゴンがいないみたいだけど?」
「居ますよ。ただ、あなたに怯えているから出てこないだけです」
「怯える? 何でだ?」
「私達龍神族、そして龍は感知能力が鋭いんです。あなた程ではないにしても、かなり広い範囲で感知能力が働きますし、それがあなたくらいの魔力をお持ちなら更に感じ取る事は簡単です」
レイトは魔力を抑える事に関しても誰よりも秀でている。しかし、それでも魔力を感じ取る事が出来る龍神族は、自分には及ばないにしても相当なものだと理解出来た。
「別に取って食いやしねえよ」
「私の龍では、あなたに近づいただけで卒倒しかねませんから。ご無礼を承知の上で近付けないようにしています。と、あなたが聞きたいのは本当はそんな事ではなく、コザックについてですよね?」
様子を見ていたレイトとしては、これとの無い絶好の機会だった。彼女自ら本題に入ってくれたのだ。
「話が早くて助かるな」
「だって、あなたの顔に書いてありましたよ。早く本題に入りたいって」
そこまで顔に出ていたかとレイト自身も気が付いていなかったようで、自分の頬を何度か掻きながら反省する。そんな彼を見てメリルは自然と笑みが溢れた。
「あなたは不思議な人ですね。世界最強と言っても過言では無い力を持ちながら、その力をこういう時に行使しようとはしない」
「は?」
「無理矢理聞き出す事くらい、あなたなら簡単でしょう?」
「んな事しねえよ。それをやっちまったら、俺はもう人じゃねえ」
「人じゃない?」
レイトは、あまり自分について喋りたく無いような仕草を見せた。だが、今優先すべき事を考えると早く本題に入りたい。
「まぁ、あれだ。実力行使ってやつは好きじゃねえって事。で、俺の話はどうでも良いんだよ。聞きたいのはあんたの話」
何故、ドラゴンにコザックを襲わせるような真似をしたのか。そして、襲う事なく去っていったのか。この二つを知りたいレイト。
「何から話しましょうか……」
「全部だ。時間はあるしな」
レイトにそう促され、メリルはゆっくりと話し始めた。
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