学園のヘタレ

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 ため息をついたルーナにレイトは首を傾げるが、彼もギルドという団体に在籍している人間である。規則くらいは覚えていてほしいとルーナとしてはいつも思うのだ。 「んなもん、ジジイにまかせりゃいいだろう」 「そうはいきません。シルヴァ様がただでさえ多忙なのはあなたも知っている筈です。余計な仕事を増やすのはどうかと思いますよ」    ダンテ達が居るにも関わらず辛辣な言葉を並べるルーナ。言っている事自体は彼女が正しいのだが、個人的な気持ちもある。実は、レイトルバーンの団員の女性の割合が他のギルドと比べても高いのだ。  他のギルドでは男性八割と女性二割であるが、レイトルバーンはその割合が男性六割と女性四割とかなり高い数値を叩き出している。  これをルーナはレイトの存在が原因ではないかと思っている。本人は団員を勧誘する業務を請け負っているわけではないが、気まぐれで時々勧誘する時がある。  その時に見せる笑顔は、女性の心を何故か掴んでしまうのだ。彼の歯に絹着せぬ発言や横暴な態度を帳消しにしてしまう程に。 「まぁ、なんとかなるだろ?」 「はぁ……」  自然とため息が出てしまう。本当は許してはいけない筈なのに、何故こうも自分は彼に甘いのか。多分、今現在レイトルバーンに在籍している女性の団員達も彼のこの無垢な笑顔に弱いのだろう。 「さて、大体の事は分かったし戻るとするか」 「シルヴァ様にどんなお叱りを受けても、私は知りませんからね」 「大丈夫だって。何とでもなんだろ。お前もいるしな?」 「私に下手な希望を持たない方が良いです。今回のこの一件に関しては」  時には律する必要がある。守らねばならない決まり事がある時や、特に現在のレイトルバーンの立ち位置を考えて行動しなければならない事もある。 「んだよ。冷てえな」 「私情で言っているのであれば、どれだけ楽な事か。いいですか? 今のレイトルバーンのギルドとしての立ち位置、レイト様はしっかりと理解されていますか?」 「立ち位置?」 「私達は、既に他のギルドから一目置かれた存在なのです。それは勿論、あなたの功績が大きいというのは私も理解しています。かと言って、あなたが言った事が簡単に通るほど甘くないのです」  要は、目標とされているギルドである事をルーナは言いたいのだ。そんなギルドが協定を簡単に破ってしまう事はあってはならない事である。 「別に問題が起こってるわけじゃねえだろ」 「シルヴァ様が、いつも色々手を回してくれているおかけで大事(おおごと)にならずに済んでいるだけです。とにかく、今回の一件で何が起こってもレイト様が一人でどうにかなさってくださいね?」  完全にルーナにそっぽを向かれた形となったレイト。そんな状態のまま、帰路につく事となってしまうのだった。
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