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定例会とこれから
本部に戻ったレイトとルーナ、そして龍神族長老の孫娘メリル。普段、ギルドマスターであるシルヴァに依頼の調査報告などはルーナがするのだが、今回だけに限りレイトがする事となっている。
「なぁ、ルーナ」
「知りません」
「私、ここに来て大丈夫だったのでしょうか?」
「メリルさんは気にしないで下さい。私も少なくともあなたには参考人としてギルドにいて頂いた方が良いと思います。ただ、踏まなければならない段階をレイト様がしっかり踏んでいないのが問題なだけです」
レイトを睨むように見ながらルーナは言った。そんな彼女の視線を直視出来ずにレイトは視線を外す。
「まぁ……なんだ。ジジイにはちゃんと俺から報告するよ。だからそんな怒んなよ、な?」
「私は怒ってませんよ。やるべき事をしっかりとやってくれたらそれで良いんです。メリルさんは、私がゲストルームに案内しますのでレイト様はシルヴァ様に〝しっかり〟報告なさって下さいね? あ、先に言っておきますけど、有耶無耶な報告なんてしようものなら後で大変な事になりますからね」
しっかりと釘を刺す事を忘れない。シルヴァに対して、どうしても自身の父親である事が甘えに繋がってしまいがちなのだ。
「分かった」
「分かればよろしいです」
ルーナは、メリルを連れてゲストルームに行ってしまった。一人残されたレイトは、顎に手を当て考える。ルーナと行動を共にするようになって約二年になるが、ずっと彼女に事務作業は任せきりだった。
「何て報告すりゃいいんだ……」
釘を刺された手前、下手な事を言えば後でどんだけ彼女に怒られるか分からない。かと言って、どんな報告をしたら良いのかも分からない。
「出たとこ勝負か……?」
レイトルバーン本部の廊下を歩きながら、一人ぶつぶつと独り言を漏らす。そんな時ほど、目的地に着くのが早く感じてしまうものだ。
「ジジイ、入るぞ」
「黒狼か。ヴィンセントはどうした? 一緒じゃないのか?」
「ん、まあな……」
何故か歯切れの悪い言い方をするレイトにシルヴァは何かを察したように眉間に皺を寄せた。
「何をしでかした?」
「何もしてねえよ! というより、ルーナがいない時は、基本的に俺が何かしたって考えるのやめろよな! 別にルーナと喧嘩したとかそういうのはねえからな!」
「ヴィンセントと喧嘩したわけじゃないというのは分かっている。だから、何をしでかしたと聞いている」
レイトは、自分が出来うる限り丁寧にシルヴァに説明した。そんな彼に驚きながらも、ルーナが何か言ったのだろうと直ぐにシルヴァは予想が出来た。
「お前の言っている事は理解出来た。だが、これではヴィンセントがいない時どうするのか頭を抱えさせられるな?」
勿論、これはギルド内ではなく外に出た時の事を言っているのである。ルーナにあまりにも頼りすぎて、自分で説明する事が壊滅的に下手になっていた。
「悪かったな……」
「まぁ、ヴィンセント自らお前のパートナーに志願した以上は何も言うつもりはない。だが、お前も彼女に頼り過ぎるなよ?」
「分かった」
珍しく何も口答えしないレイトに少々驚いたが、彼自身思う所があるという事だけはシルヴァに伝わったらしくそれ以上は何もお咎めは無かった。
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