定例会とこれから

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 落ち込んだ様子のルーナに対して、レイトは少しばつが悪そうな表情を見せた。ルーナが自分を心配しているというのは分かるが、それ以上に悪魔の代償が危険な代物である以上は致し方無い。 「そんなあからさまに落ち込むなよな。別にお前が悪いわけじゃねえんだからよ?」  彼女が自分の力になりたいと思っている事に関してはとてもありがたい。だが、適材適所という言葉があるようにどう考えてもレイト以外に務まる者がいないのだ。 「我儘を言ってしまいました」 「気にすんな。んじゃ、定例会に行こうじゃねえか」  レイトにとっては久々の定例会である。七日に一度、ギルドの幹部達が一堂に会する日なのだが、レイトはいつも出ていなかった。理由は簡単で、面倒以外にない。  毎度の事ながらルーナに散々怒られているが、それでも出ないのだ。珍しく今日は定例会に参加するがゆえに、レイトとルーナは横並びで会議室にやって来た。  扉を開けると、普段見ない顔が現れたせいもあり、席に腰を下ろしている幹部達が目を丸くして見る。 「珍しい奴がいるじゃねえか」  初めに声をかけたのは、頭を丸くして顎髭を蓄えている初老の男だった。名はグロン・タイビー。筋骨隆々という言葉がよく似合う豪快な男である。 「っち、うるせえな」 「んだと、クソガキ。てめえ、たまに定例会に顔出したかと思ったら女連れて帰ってきたそうじゃねえか。ルーナがいるってのによ?」 「色々あんだよくそが」  顔を合わせた途端、互いに暴言を浴びせる両者だが、実はレイトがルーナと組む前は、このグロンと行動を共にしていた時期がある。明らかに息が合わなさそうな二人だが、他の団員も参考にすべきとまで言われた程に連携が上手い。  近接戦闘を得意とするグロンと、近接戦闘及び遠距離魔法両方を行えるレイト。グロンの動きを見ながら魔法を放ち、尚且つ場合によっては近接戦闘をする事が出来る。 「まあまあ。レイトが女性を連れて帰ってくるのは、ある意味お約束みたいなところがありますから」  横から口を挟んだ眼鏡をかけた青年。レイトよりも少し歳上かと思われる彼の名はウィル・バッケンジスタ。このレイトルバーンの頭脳と呼ばれている。現在彼がグロンと組んで行動を共にしているが、意見が合わない事が多いようだ。 「けっ、こんなガキの何処がいいんだかな」 「脳みそまで筋肉で出来たような筋肉ゴリラに近寄る女なんているわけねえだろ、あほが」 「ああ!? やんのかクソガキ表でろや! 魔王倒したぐれえで生きがるんじゃねえ。世の中の広さってやつを教えてやる!」 「上等だ! 三秒で肉の塊にしてやるよ!」 「くだらん言い争いはよせ! 定例会だぞ!」  ここでようやく、ギルドマスターであるシルヴァの一喝で定例会が始まるのだった。
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