学園と魔王の娘

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学園と魔王の娘

 レイトの朝は少し早い。無論、それは学生としての話である。普段、レイトルバーンでのレイトの依頼は学園に通っている時は側近であるルーナあるいは、他の団員達が代わりに消化している。だが、以前のようなドラゴン数体という高度な依頼に関しては、団員達では命に関わる為にレイトが学園の日程が終了次第取り掛かる事となる。 「おはようございますレイト様」 「ん……」  レイトはどちらかというと寝起きは良い方である。ルーナはレイトの部屋の鍵のスペアを持っており、朝勝手に部屋に入る事を許可された唯一の存在である。朝始めにルーナが彼の部屋に入り、カーテンを開けて朝日が差し込むと彼の朝が始まる。そういう意味では、ルーナが一番レイトルバーンで早起きとも言える。  眠い目を擦りながら、レイトはもぞもぞとベッドから起き上がり朝陽を身体に浴びて意識を覚醒させてやっとベッドから立ち上がり、ルーナが用意した制服を覚束ない足取りで受け取り着替える。朝食として、彼はルーナが作る軽食を食堂にて食べる事になるのだが、その時まだイザベラは起きていない。食堂の椅子に腰を下ろすと、黙々と食事を始める。 「本日は学園の日程終了後は何もありませんので、自由となりますが如何されますか?」 「んー……。んー?」  朝のレイトは基本喋る言葉は〝んー〟もしくは〝あー〟のみ。単純に喋る事に対して面倒だと感じているだけである。初めの頃はルーナも彼が何を言いたいのか全く理解出来なかったが、今となってはすっかり慣れてしまい大体彼が何を言いたいのかは理解できた。 「メリルさんに詳しい話をまた聞くという事でよろしいのですか?」 「んー」 「かしこまりました」  朝食を終え、また部屋に戻るとレイトは眼鏡をかける。これには度は入っておらず伊達眼鏡である。これは本人がルーナに眼鏡をかけたいのだと言って彼女に頼んで買ってきてもらったものである。視力が低いわけでもない彼が何故眼鏡をかけたいのかとルーナも不思議に思ったが、彼曰く「正体を隠す為」なのだと言う。  何から正体を隠すのだろうかと、ルーナは思ったがそれは本人にしか分からない為、それ以上は何も聞かなかった。ルーナの予想では、魔王を倒したのが自分だという事を隠す為なのだろうと思っている。  間違いなく眼鏡があろうがなかろうが、魔王を倒したのがレイトだと分かる者などいるはずが無いとルーナ個人としてはおもうのだが……。 「よし、髪の毛もばっちり決めたしいくか!」  七三分けに固めたツヤツヤの髪をルーナに見せるレイト。正直、彼の美的感覚を理解できそうにもないルーナ。普段通りの無造作の髪型にしていれば、少なくとも虐めを受ける事もないのにとは言えない。少し整髪料の使い方を教えなければと思うのだった。 「今日は学園では何をされるのですか?」 「模擬戦だったかな。適当に負けて終わらせる」 「そうですね……」  わざとだとしても、レイトが負ける事があまり好ましくないルーナ。当の本人は負けず嫌いという訳でもなく、負ける事も必要だと思えば実行する。レイトの方が負けず嫌いだと勘違いされるが、彼女の方が実際は負けず嫌いである。 「また不機嫌になってんのか」 「相手は生徒ですから、レイト様がやろうと思えば負けるはずはないです。でも、それで相手が調子に乗るのも目に見えてます。それが気に入らないだけです」 「仕方ないだろ。これはジジイが学園では目立つ行動を取るなっていう命令なんだから」  口は悪いレイトだが、育ての親であるシルヴァの命令には基本的に忠実に従う彼。反対に自分が納得出来ないとギルドマスターであろうと噛み付くルーナである。
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