行方

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行方

 先程の騒ぎは会議室まで届いており、レイトが中に入るとシルヴァが心配そうな面持ちで見ているキーラと共に彼を迎える。シルヴァは、何があったのか把握しているようでそれに対してレイトはばつが悪そうに彼を見た。 「喧嘩したようだな」 「喧嘩じゃねえよ」  会議室の椅子に多少乱暴に座るレイトからキーラへと視線を移すシルヴァ。彼女が魔王の娘だということは彼もキーラ本人から既に聞いたらしい。彼は話を進めるために身体も彼女の方へと向けた。 「キーラ、お前が魔王の娘だと自分で言っている以上はお前が魔王の娘だと此方としてもそれを信じる他ない。が、何故わざわざ黒狼の所までやってきたんだ?」 「だから、それはさっきも言ったけどレイトが私に居場所が無かったら自分の所に来いって言ったからだよ」 「黒狼、キーラが言っていることに間違いはないか?」 「二年も前の事だ。正直覚えてねえが、言ったんだろうなとも思う」  シルヴァとしては、キーラが言っている事が嘘だとも思ってはいないが、レイトにも事実確認は必要になる。彼は手元にある羊皮紙に万年筆で調書を書き始めた。 「この悪魔の代償(デーモン・プライス)についても見覚えはない、という事でいいんだな?」 「無いってば。あたしは自分で言うのもなんだけど、誰かに危害を加えるような事はしないから。確かにむかついて黒魔法でちょっと悪戯したりもするけど……」  シルヴァがキーラに使用済みの悪魔の代償(デーモン・プライス)の羊皮紙を渡して確認させるが、全く身に覚えがないと突っ返された。レイトもキーラが何も知らないというのは本当なのだろうと思っているため、特に何かを聞くそぶりも見せない。  それよりも、今レイトの頭にあるのはルーナだった。あんな彼女を見るのは初めてだったし、何よりも泣いていたのだ。今、彼女を探さなくていいのかと心の中で迷っていた。 「黒狼」 「ん?」 「行ってもいいぞ」 「何がだよ」  シルヴァの言葉の意味を察する事が出来ない程レイトも馬鹿ではない。しかし、自分が今動揺していて更に迷っている事をシルヴァが分かっていて後押ししたのだとしてもそれを認めたくない。 「ヴィンセントに何を言ったのかは知らない。だが、あれ程あいつが取り乱したのはお前の責任だ」 「うるせえな。今はそんなのはどうでもいいんだよ」 「本当にそう思ってるのか?」 「……」  シルヴァは、レイトがそう思っていないのを分かっていながらその質問をぶつける。いくら彼が強くなりギルドに多大な功績を残しても、結局のところはまだ子供なのだ。育ての親として後押ししてやるのが務めだと思っている。 「さっさと行け。キーラの事は私がなんとかする」 「え、酷くない? なんとかするってあたしが問題あるみたいじゃん!」 「分かったよ……」 「レイト、イザベラならヴィンセントの居場所を知ってるはずだ。しっかりやれ」  シルヴァがあえてレイトの名を口にしたのは、ギルドマスターとしてではなく、親として言った言葉だという意味も込めている。そして、それを理解したようにレイトは頷いてルーナの居場所を知っているらしいイザベラがいる食堂へと向かった。
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