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「こらぁー! 離せぇー!」  一人の少年が、衛兵に乱暴に連れて来られ、国王の前に突き出された。床に膝をつかされ、その痛みに顔を歪める。 「貴様は何をしたんだ」  年老いた国王は、ちらりと少年に目をやっただけで、すぐに手に持った札束を数えるのに戻った。無愛想にそう言われると、少年は国王をきっと睨みつけて言った。 「何もしてないやい! 僕は平々凡々のただの住民だい!」 「ではどうして連れて来たのだ、衛兵」  すると衛兵は、はっ、と敬礼をしてから答えた。 「何となく、不審だったからであります!」 「そんな理由があるかぁ! 王様! 僕は何にも悪い事はしてないよ! ほら! 見てよこの純粋に輝いた目!」  国王はじっとその目を見つめて、暫く考えてから言った。 「……うむ、死刑」 「そんなぁ! 何でだよぉ!」 「何となく信用出来ないから」 「ふざけるな! あっ」  少年はまた衛兵に腕を掴まれ、引きずられていく。少年は何とかそれから逃れようともがいた。 「僕は何にもしちゃいないよ! 誰か、誰か助けてぇ!」  ――ばたんっ!  その時、扉が開かれ、その向こうに一人の男の影が浮かんだ。  忽ち衛兵たちが飛び出し、剣を構える。すると影は、両手を上げて言った。 「おーっと、乱暴はよしましょう。僕は見ての通り丸腰です」 「何者だ!」  影は国王に歩み寄ると、漸くその顔を上げた。 「何、しがない探偵です。桂田霊園で探偵業をしております」  探偵という職業に、国王の表情が怪訝になる。一層信用出来なさそうな職であろう。 「国王、このやり方はあんまりです。信用出来ないからと言って、何も殺さなくても」 「では、探偵とやら。お前は如何にしてその少年が信頼出来ると、私に示せるのだ?」  良いでしょう、と探偵は微笑んだ。 「あの子を人質にしてください。僕は妹の結婚式の為、三日程此処を離れなくてはなりません。もしその三日の間に僕が戻って来なかったら、あの少年をどうぞ殺してください」 「ほぅ」 「但し、僕が三日の間に戻って来る事が出来たなら、その少年は解放し、今後一切この理不尽な処刑はしないと誓ってください」  探偵の目には強い光が宿っていた。国王はそれをじっと見つめ返す。そして、暫くの間の後言った。 「……駄目だ」 「……えっ!?」 「貴様こそ信用ならん。ひっ捕らえろ!」  忽ち探偵は衛兵たちに取り押さえられてしまう。じたばたしていると、衛兵の一人が剣の柄で彼の頭を一撃殴った。  探偵は声を上げる間もないまま、段々と遠ざかっていく意識に身を委ねていた。 「いい加減、目を覚ませ」  国王の声が遠くに聞こえる。 「……起きろ……起きろ!」  ……え? 何……? 「起きろって言っているだろう! キンダイチ!」
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