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話し終わった後、二人の表情はますます暗くなった。
「その先生って……どの先生なのかな?」
一の問いに答えたのはスダチだった。
「家庭科の日下部 雄二先生です。僕らを作ってくれた」
「その先生が、お盆にも見回りをしようと言っているんです」
骸骨も話に入って来た。日下部という教員は、他の教員に比べると割と熱血教師的な存在らしい。
「成る程……それじゃあ、他の教員も?」
「うんにゃ」
足元から声が聞こえた。驚いて見ると、自分を見上げていたのは一匹の犬だった……人の顔をした。
「……人面犬っ!?」
如何にも、と言わんばかりに彼は頷く。本当にいたんだ、とあんぐり口を開けたままの一を他所に、彼は話の続きを始めた。
「他の教員は賛成しでねぇ。見回りなんがしなくても、厳重に鍵掛けりゃあ良い話だ。んま、教頭はそう言っでるけど、ほんどはおっかなねぇんだな。他の教員だってそうだ。夜の学校なんていたくねぇんだべ」
訛りが凄過ぎる。話が全く入って来ず、頭の中で消化するのに時間が掛かった。
「でも、あの日下部は是が非でも見回りをしてぇんだな。結局押されて、教頭はOKしぢまった。尤も、日下部一人でって条件でだけんどな」
「……はぁ」
溜息のような、そんな間抜けな返事をしてしまった。人面犬はそれを良く思わなかったのだろう。少し不貞腐れたように、こんな事を言った。
「……何か、変な所でもあるんけ」
慌てて大きくかぶりを振ったのがまずかった。この慌てようでは、殆ど肯定しているのと同じである。
人面犬はむすっとしたまま、その場を離れていった。
「それで、キンダイチ先生……」
他のお化けたちが、すがるような目で一を見る。
「何とかなりませんか……」
最早彼に選択肢はなかった。
「……まぁやるだけやってみます」
この言葉にお化けたちが歓喜の声を上げたのは、言うまでもない。
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