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それはとある夏の暑い夜だった。
「ゔ〜暑いよ〜…」
あまりの暑さに目を覚ました舞は、少しでも涼しくなるよう窓を全開にした。しかし対して涼しくはならず、ばたりと布団に倒れこんだ。
『こうも暑いと寝るのさえ辛いんだけど…』
舞の部屋にはエアコンどころか扇風機もなく、代わりに団扇や扇子が転がっていた。しばらく舞は団扇を使って仰いでいたが、やはり涼しくはならずとうとうキッチンまで行って麦茶を飲もうとした。
トン、トン
舞は廊下をなるべく音を立てずに歩いた。寝ている両親を起こさないよう気をつけて。
『しっかし不気味だな…。電気ぐらいつけても良かったかな?でもお母さん達起こしそうだし。』
そんなことを考えながら進んでいくと、後ろから足音が聞こえた。
ペタ…ペタ…
『あれ?私以外にも起きたの居るの?』
そう思い振り返るも人影はなく、暗い闇が広がるばかりだった。舞は不思議だとは思ったが、特に気にせず歩き始めた。しかし、舞が進むとやはり後ろでペタペタと音がする。
『愛かな…?悪戯ならタチ悪いわ。』
舞は妹の仕業かと思い、廊下を引き返した。だがそこに妹の姿は無く、やはり人の気配すら感じられなかった。舞は不気味な感覚を覚えつつも、キッチンへと足を進ませた。
◇◆◇◆
『麦茶うめぇ…』
舞はゴクゴクと豪快に麦茶を飲んだ。今までの暑さも多少吹き飛んだような気がした。満足した舞は自分の部屋に戻ろうとした。すると突如としてキッチンの電気が消えた。
「えッ!何!?」
驚いた舞は急いで電気のスイッチを探した。焦りつつも壁を伝ってスイッチを見つけた。急いで電気をつけようとした。その時、舞の手元に
生温かい手のようなものが当たった。
「ヒッ」
舞は情け無い声を出してひっくり返ってしまった。
…アハハ…
幼児のような笑い声が聞こえた後、電気はパッとついた。舞は、普通では有得ないことが起こった恐怖で硬直し、震えていた。気づくと額には冷や汗をかいていて、暑さなんて微塵も感じなかった。舞はもう誰が起きても構わないという勢いで自分の部屋へと戻った。
◇◆◇◆
舞は部屋へ戻ると、バッと布団へ潜り込んだ。身体はカタカタと震えていて息も荒く、鳥肌が止まらなかった。
『何だったの…?明らかに愛じゃない!あんな幼稚園児みたいな笑い方じゃないし、こんな暑い中寝てたならもっと手は熱いはず…!でも私に触れたのは、生ぬるい温度の、幼児くらいの手の大きさのものだった!何アレ!ほんと何アレ!?』
あまりの出来事に思考が追いつかない舞は布団にくるまりながらまだ小刻みに震えていた。そんな舞に追い打ちをかけるように耳元で何者かに囁かれた。
…おねーさん、また遊んでね…
「ああああああああああああ!!!」
あまりの恐怖に耐えられず、舞はとうとう叫んでしまった。部屋のドアがガチャリと開いて妹の愛が顔を覗かせた。
「…ねーちゃん煩いよ。何時だと思ってるの?」
「あ、あああ愛!さっきキッチン行ったら!廊下でペタペタって!電気が消えたりついたりして!私ひっくり返って!部屋まで戻って「また遊んでね」って!」
「はぁ?今更何言ってんの?ずっと前からそんなことをあったじゃん。」
え…と息を呑む舞を差し置いて愛は続けた。
「昔から、いつのまにか電気が消えてるとか、エアコンがついてるとか、ドアが開くとかあったじゃん。声って幼稚園児みたいな声でしょ?そんなのしょっちゅう聞くじゃん。私なんか部屋荒らされたけど?もー、さっさと寝てよね。」
じゃ、とそそくさと部屋へ戻る妹を、舞は気絶寸前の状態で見送っていた。
『ああ、そういえば。私寝る前に窓全開で寝たわ。あの子の仕業なのね。』
起きたときから始まっていた恐怖のオンパレードに舞は気づくと同時に意識を手放した。
…ふふふ、面白いオモチャ見つけた…
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