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それは、冷ややかな
チリリン、と風鈴の涼し気な音が部屋に響き渡る。
「ねぇ、こんな話はどう思う?」
隣で一生懸命に机に向かっていた彼女が、くるりとこちらを振り向き僕の服の袖を軽く引っ張った。
「ん?今度はどんな話を思いついたんだい?」
僕の彼女は、絵本作家だ。彼女の創る絵本は独創的で少し大人向けなのだが、世間では絶大な人気を誇っているようで中々人気が高いようだった。
ただし、一つ問題点(と、いう程でもないが)があるとすれば、彼女は他の人よりも自己肯定感というものが低いことだろうか。
話はいくらでも思いつくものの、自信がないのかストーリーが思い浮かぶ度に僕に物語を聞かせてくれるのだ。それは、彼女の頭の中を誰よりも先に覗くことができるようで、絵本を執筆している彼女の隣はまるで「彼女」という名の劇場の特等席に座っているような気分になる。
「今、考えてるのはね、男の子がスイカのお化けに食べられてしまう話」
「へぇ、ホラーなの?」
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