それは、冷ややかな

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台所まで辿り着くと冷蔵庫の上の小さな扉をガポッと開けた。  冷ややかな風が頬を掠める。僕はその扉の中から、青い袋に入ったアイスキャンディーとピンク色のカップアイスを取り出した。火照った手の平にじんわりと冷たい温度が染みわたる。  きっと、彼女はイチゴが大好きだから「どっちにする?」と聞けばカップアイスの方を指すんだろうな、なんて考えながら両手にその温度を感じて、彼女のいる部屋へと戻ろうとした。その時だった。  ピンポーン  インターホンが鳴った。僕はアイスを持ちながら、足早にドアの方へと向かう。パタパタパタ、と僕の足音だけが廊下に響いていた。  申し訳ないけれど、アイスを片手に持ったまま対応させてもらうことにしよう。宅配便が届く予定はないし、僕にも彼女にも友達が来るなんて話を聞いてはいない。恐らく何かのセールスか何かだろうし、早く済むだろう。  ガチャリ、と大げさなくらいの大きな音を立ててドアノブが回り、ドアを開ける。  その瞬間、むわっと外で太陽に温められていたのであろう熱風を全身に浴びた。耳障りな蝉の声が耳を劈いてくる。 「よう、久しぶり。」
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