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恐る恐る牧師の元へ行くも当然俺の予想は外れ、代わりに一枚の紙を渡された。
『わんぱくプールタイム、いよいよスタート』。恐らくは父兄に渡すプール解禁のお知らせだ。
「子供達が楽しみにしてるからね。今月から市民プールも解放されたし、来週の水、木、金と、天気が良ければ、こまどり組から連れて行こうと思うんだが」
「いいと思いますよ。俺は賛成です」
幼稚園から歩いて五分の場所に、「押川公園」がある。テニスコートや野球場、芝生広場にアスレチック広場などがある、この付近で最も大きな公園だ。そこにある市民プールは毎年六月から九月まで開いていて、中学生以下の子供は百円、大人でも二百円で入ることができる。
「………」
渡されたプリントには、『引率の先生』の名前が書いてあった。
第一回 こまどり組・見谷園長と海斗先生
第二回 うぐいす組・見谷園長とゆう先生(新しく来て下さった先生です!)
第三回 つばめ組・ゆう先生と音弥先生
「新任の先生とバイトの俺っていう組み合わせは、父兄的にはちょっと不安に思うところもあるんじゃ……」
「音弥は父兄の方からの信頼も厚いし、去年も一昨年も引率してくれたから大丈夫だよ。勇星は第二回の時に私と来て、色々と学んでくれ」
「親父。俺、水着持ってないんだけど」
「そうか、それじゃあ用意しないとならないな。幾らくらいあれば足りるかな……」
ズボンのポケットから財布を取り出した牧師を見て、俺は慌ててその手を押さえた。
「いいっ、大丈夫です。自分で出させますから!」
「でも、音弥」
何しろスロットを打つ金があるのだ、水着代くらい払わせるべきである。
「音弥くん。俺、日本は五年間のブランクがあるから。一人で電車乗って買いに行くのは不安だなぁ」
「……俺が一緒に行く。行けばいいんだろ」
勇星を睨んで言うと、見谷牧師が豪快に笑って俺達二人の肩を叩いた。
「何だ、随分と打ち解けたみたいだな! ホッとしたよ」
「ち、違います……!」
「違わねえよ。俺達ナカヨシ。な? 音弥くん」
「………」
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