思いと気持ち

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「ああっ! あ、あっ……イッ、ちゃう、って……!」 「イッていいぞ」  手の動きはそのまま、舌の付け根から先までを使って、勇星が俺の左側の膨らみを愛撫する。こんなの我慢できる訳がなかった。今まで一度として体感したことのない甘く強烈な電流が、下半身から腰の裏側、背中、そして頭のてっぺんまで突き抜けて行く── 「ひ、──あぁっ! 勇星っ、ゆ、うせいっ……!」  その瞬間に名前を呼んだことで、勇星にも火が点いたらしい。 「っ、……音弥っ」  俺が精を吐き出し終えるのを待たずに、勇星が俺の上に覆い被さってきた。片腕で俺を強く抱きしめ息を荒くさせながら、自身のそれを扱いている。本当にセックスを我慢してくれているんだと思うと切なくなって、俺は両手で勇星のそれを握った。 「音弥……」 「お、俺が握ってる。でも下手だから……勇星、好きなように腰動かしてよ」  助かる、と冗談ぽく笑う勇星。その頬に伝う汗が綺麗で、思わず見とれてしまう。  俺の上で腰を振る勇星。手のひらに感じる、火傷しそうなほどの熱。降ってくる汗の粒、精の匂い──。やがて吐き出された勇星のそれが、俺の下腹部を白く染めた。 「……はぁ、……クッソ燃えた」 「………」  ソファの上に体を投げ出した勇星が、ゼエハア言いながら額の汗を拭う。どれほど溜め込んでいたのか知らないけれど、腹の上に出されたそれは溶けたバニラアイスとそれほど変わらない濃さだった。 「……大丈夫か音弥くん」 「うん、少しぼーっとするけど……」  のろのろと伸ばした手で、勇星がソファ横のシェルフから数枚のティッシュを抜き、俺の腹を拭いてくれた。数枚程度じゃ足りない量だ。「よくこんな出たな」と他人事のように呟いて、勇星が今度は箱ごとティッシュを手に取った。 「随分溶けちまったな、悪い」  半分ほど残っていたパフェを勇星が綺麗に平らげ、それから二人でシャワーを浴びて、海の見える部屋の広いベッドで少しだけ昼寝をした。  恋人。そんな認識でいいのだろうか。  俺はすぐに寝息をたて始めた勇星の横顔を見つめながら、ふつふつとこみ上げてくる嬉しさに唇を噛みしめた。生まれて初めての恋人が男だったことに関しては驚きだけど、相手が勇星なら嫌な感じは全くない。  計画を持ってアダムとイブを作った神の意志には反するかもしれない。だけどこの世の全てに神の計画があると言うのなら、勇星が同性愛者であることも、そんな勇星と俺が出会ったことも、きっと何かの意味があるのだ。  ……そう信じたい。
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