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「それではプログラム一番、こまどり組とうぐいす組のダンス『忍者のカーニバル』です。忍者のみんなは、真ん中に集まってください!」
にんにん! と十三人のチビ忍者達が校庭の中央に走ってくる。お揃いの衣装は、今日のために婦女会の人達が作ってくれたものだ。模造紙で作った小さな刀と、折り紙製の手裏剣もある。
曲が始まり、これまで何度も練習した振付をみんなが一生懸命に踊っている。「やぁ、やぁ!」の掛け声と一緒に刀を上下に振るところは、踊るみんなはもちろん、見学のつばめ組も大好きな振付だ。椅子に座ったまま拳を突き出し、同じように踊っている。
最後の「やあ!」で手裏剣を空に投げ、曲が終わった。間髪入れずに拍手と歓声が沸き起こる。スマホで撮影する母親に三脚で固定したデジカメをチェックする父親、嬉しそうに手を振る兄弟姉妹。
「俺の教えが上手かった」
海斗が鼻を高くして腰に手をあてる。確かに海斗は俺達の間で一番踊りを教えるのが上手かった。完全に子供と同じ目線で、一緒になって楽しむことができるからだ。
「かいと先生!」
「みんな、上手だったぞ! よく頑張った! 百点満点!」
興奮する園児達を褒めちぎる海斗の横で、勇星が「忍者の親玉だな」と呆れたように笑った。
「それではプログラム二番、……」
その後も玉入れや父兄自由参加の綱引きなど、予定通りにプログラムは進んで行った。
つばめ組の徒競走では最下位でも「でんぐり返りゴール」をキメた裕太が拍手に包まれ、その後で教会側のサプライズによる俺達「先生組」の徒競走もやらされた。海斗が一位、勇星が二位、俺が三位。ダントツでビリの見谷牧師に笑いが起きたが、牧師は照れ臭そうに笑いながらガッツポーズをしていた。
そして午前の部最後のプログラム。
「それでは、『フラワー・ラン』に参加される父兄の皆様。一緒に走るお子様と一緒に入場門までお集まり下さい!」
言ってからマイクを置いて、俺も入場門に駆けて行く。
「愛花!」
「おとや先生!」
長い髪を二つのお団子にした愛花が、しっかりと俺の手を握った。
「先生、赤いお花を取ってね!」
「わ、分かった。赤いやつだな」
周りが全員、足の速そうな若いお父さんに見える。途端に緊張してきて、愛花に「大丈夫?」と心配されてしまった。
「音弥、これは俺とお前の勝負だぜ」
道介の手を握った勇星が俺に不敵な笑みを向ける。
「頑張るぞ道介。俺がお前を花の妖精王にしてやる」
「う、うん。頑張るけど、それはちょっと恥ずかしいかも……」
「おとや先生、がんばろうね!」
「ああ……全力で行こう!」
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