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「音弥くんのお陰で、俺もまた作曲したいって気になった。ありがとうな」
その言葉にハッとして、俺は少しだけ伏せていた目を勇星に向けた。
「……順調?」
「ああ、順調。今作ってるのは、さっき話した天使の絵からイメージを貰った曲なんだ」
「じゃあタイトルは『サンダルフォンと仲間たち』かな」
「違げえよ。まだ考え中」
勇星の手が俺の頬に触れる。更に距離を詰められ、俺は素直に目を閉じた。
押し付けられた唇、ゆっくりと絡み合う舌先。それだけで体が熱くなった。これまで散々仕込まれてきた勇星の愛撫を、俺の体は待ち侘びてるんだ。
「ん、……」
勇星の唇が俺の顎のラインをなぞるようにして移動し、喉仏に、首筋に、耳の付け根にと順に移動する。くすぐったくて身を捩ると、シャツの裾から入ってきた右手に軽く乳首を摘ままれた。
「っ……」
「敏感」
「ん、……ぁっ……」
きつく目を閉じ、シーツを握る。あの美しい勇星の指先が俺の乳首をくすぐっているなんて、考えただけで顔が真っ赤になってしまう。
「うぁ、……」
シャツが大きく捲り上げられ、勇星の前に熱くなった肌が露出した。体ごとのしかかってきた勇星が、より刺激的な愛撫を期待し待っていた反対側の乳首に唇を被せる。
「あっ!」
未だに、どうしても慣れることができない。勇星の舌先で転がされる感触、啄んだ時の濡れた音、自分の口から洩れる声。何もかもが恥ずかしくて、同時に凄く扇情的で、やめて欲しい反面、ずっとして欲しくて堪らない。
「ふ、あぁ……。ゆう、せ……気持ち、い……」
「もっとするか?」
「……ん、……あぁっ!」
勇星の舌の動きが激しくなり、俺は背中を弓なりに反らせながら思い切りシーツを掴んだ。勇星の舌から体中に行き渡る電流。こんなに小さな刺激なのに、どうしてこんなに切なくなるんだろう。
「あぁ、……あ、ん……」
「……はあ。音弥くんの声、マジで興奮する」
「んん、っあ……!」
「音弥、……」
俺が痛がるのを知っているから、勇星はそこに歯を立てたり強く吸い上げたりはしてこない。だけど勇星が高ぶっているのも本当で、その息使いは荒くなっていた。
勇星の呼吸が荒くなる時。それは勇星の中で完全にスイッチが入った時だ。
「勇星……」
本当なら、俺からこんなことを言うのは恥ずかしい。がっついているとも思われたくない。こういう時の主導権を握るのはいつだって勇星だし、下手なことはせず俺は黙って感じていれば良いんだけれど。
「どうした?」
……セックスってきっと、お互いがお互いを思い合い、触れ合い、伝え合うべきものなんだ。
「……勇星。俺も、勇星の……触りたい」
「………」
「いい?」
俺の胸元から顔を上げた勇星が、数舜ポカンとした後で嬉しそうに笑った。
「やべえ。今のでちょっとイきそうになった」
「う、嘘つけ」
「マジでさ」
言いながら勇星がシャツを脱ぎ、ベルトを外した。
「音弥くんも脱げよ。一緒に風呂入ろ」
「え……でも」
「記念日だからな。全身綺麗に洗ってやる」
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