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「う、あぁ……、やっべぇ……!」
咥えたまま視線を上げれば、勇星は形容し難い笑みを浮かべながら真っ白い天井を仰いでいた。浴槽縁についた両腕には、力が入り過ぎているためか血管が浮き出ている。荒い息を何度も吸っては吐き出し、時折、前後する俺の頭を撫でながら「マジでやべえ」と漏らしている。
勇星も普通の男なんだなと思うと、何だか可笑しかった。
「音弥、ちょ、一旦放せ。もう出そ……」
「んん」
いい、と言ったつもりだった。引き剥がされないように両腕を勇星の腰に回し、咥えたまま強く抱きしめる。
「音弥、ぁっ……!」
低い声が俺の名前を呼んだ瞬間、勇星が俺の口腔内で射精した。勢いが良すぎる上に熱くてびっくりしたけれど、何とか噎せずには済んだみたいだ。
「………」
体液を含んだまま、ゆっくりと勇星のそれを口から抜く。
「はあぁ、音弥くん天才か……」
頬を膨らませてじっと黙っていると、勇星が笑って「吐け、吐け」と言った。取り敢えず手のひらにそれを吐き出し、量の多さにまたびっくりしてしまう。
「初めてのフェラ、どうだったよ?」
「……苦かった。けど、勇星がちゃんとイッてくれて良かった……」
「我慢できる訳ねえって」
くすくすと笑って、勇星が立ち上がる。
「俺も気持ちで返さねえとな。……と、いいモンあるじゃん」
「なに?」
広い浴室の隅に立て掛けてあった「それ」は、俺も気にはなっていた。透明でビニール製のそれは、どう見ても海で遊ぶ時に使うエアマットだ。だけど、いくら広いとは言っても浴槽に入る大きさじゃない。それならどうやって使うのかというと……
「はい、ここに寝ろ。仰向けでな」
「そういうこと……?」
素直にマットの上に寝転がって、天井に視線を向ける。
いよいよ高鳴り始める心臓……俺は今から、勇星と。
「じゃん」
「それは?」
「音弥くんの負担を減らす必須アイテムだな」
ボトルを取った勇星が自分の手のひらに中の液体をたっぷりと垂らし、両手を合わせてかき混ぜる。それを見つめながら、俺は緊張と期待を膨らませ強く唇を噛みしめた。
「ゆっくりやるから、不安がらなくていい。そのまま寝ててくれ。……あ、でも脚は開いとけ」
「う、うん」
恐々開いた脚の間──萎えた俺のそれに触れ、勇星が両手で揉み込む。それから、根元の下の膨らみを同時に優しく揉み合わせる。温かくてぬるぬるした液体が立てる音は何だか凄くやらしかった。
「気持ちいいか?」
「い、い……けど、また勃っちゃうんだけど……」
「同じく。あー、音弥くんの柔らかい玉に思いっ切り擦り付けてえ」
それも相当気持ち良さそうだ。でも、今からするのはきっとそれ以上に気持ちいい、はず。
「ん、あ……変な感じして……」
「音弥くん。自分のココ、先っぽの気持ちいいとこに集中してろ」
「あぁっ、……ん、ぅ、……」
先端の裏側を親指の腹で強く擽られ、マットから腰が浮いた。と、玉を愛撫していた勇星の手が、それより更に下の奥へと潜り込む。
「やっ、……!」
驚いて内股がビクついた時にはもう、勇星の中指が三分の一くらい俺の中に入っていた。
「痛くねえか?」
「へいき……」
「擦っててやるから、ちょっとだけ我慢してな」
「ん、ん、……あ、んっ……」
ペニスに与えられる刺激と、アヌスに感じる微妙な異物感。中で勇星の指が動くとつい力が入ってしまって、「まだ締めなくていい」と笑われた。
「どうだ?」
「……お、思ったより……全然、痛くないかも……指ならまだ……」
だから、──だから。
「勇星の、挿れて欲しい……」
痛みなんかより、緊張より不安より、何よりも早く勇星と繋がる悦びというものを、俺は知りたかった。
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