花火大会

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「たまには何処かに出掛けようよ」 僕の彼女である七海ちゃんがプーっと頬を膨らませて拗ねた。今日は何時もの様に僕の家で一緒に勉強している。夏休みの宿題を学年でいう一つ下の七海ちゃんに教えている最中の事だ。ついついちょっとした事で言い合いになった。僕は人込みが嫌いでデートは外出を避ける事が多い。七海ちゃんはそれが不服の様だ。 「えー、外は暑いし夏休みだから何処に行ったって混んでるじゃないか。こうして勉強していた方が理にかなっているよ」 僕が言うと七海ちゃんはブンブンと頭を振る。 「それじゃ、つまらないじゃない。折角の夏休みだよ」 「じゃあ、人込みを避けて山や川に行かない?」 「うーん、それもいいけど花火大会に行きたい」 七海ちゃんは目をキラキラさせて言った。僕は腕組みをして考える。ここ埼玉県の熊谷市の花火大会は大きくて人込みが凄い事は想像するに難くない。人込みの熱気、ベタベタの汗。考えるだけで辟易した。 「花火大会か。ここからだって見えるじゃないか」 「違うの、あのね、お姉ちゃんに聞いた話だと近くで見ると迫力が全然違うんだって。それに音楽も流れたりするらしいの」 七海ちゃんが僕の腕を握る。可愛い目がますますキラキラと輝いていた。 「ねえー、いいでしょ」 「しょうがないなぁ」 僕はウンと頷くと、部屋に置いてある小さなテーブルをどける。 「襲ってもいいんだったらね」 「キャー」 七海ちゃんは面白がって逃げた。僕はその姿が可笑しくて笑ってしまった。やれやれ、花火大会くらい付き合ってやるか。付き合って半年、デートらしいデートは一度も無い。
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