4人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
色気の足りない告白を
「……ちょっといいか?」
そう言って庭先にやって来た隣人。
途端色めきたつ3つ子達。
彼は大きな身体に綺麗な顔のハーフ。いつも距離が近くて、こっちの心臓がそろそろ持たない。
「メダカの事?」
努めて穏やかに返すが心拍数やばい。
……僕はこの男に恋をしているから。
こんなにイケメンだもの、仕方ない。そう開き直らなきゃ死んでしまうくらいの片想いだ。
「いいや。その」
珍しく歯切れが悪い。
もしかして海水魚の飼育に挑戦したい、とかかな。
そんなことを考えていると。
「うわっ、冷たッ!」
突然背中がひんやりした。濡れている。
振り返ると水鉄砲を持った妹達がニヤついていた。
「コラッ! ………っ!?」
叱りつけようと声を上げた時、背中を何か大きくて温かいモノが覆ってきた。
「え、と……弘樹?」
気がつけば彼に後ろから抱きしめられていた。
少し荒い吐息が首筋にかかり、僅かに回された手が震えている。
「……六雄、愛してる」
「!!」
祈るように呟かれたその言葉は僕の耳朶を擽り、同じく身体を震わせるのには充分だった。
(『アイシテル』? え、ど、どういう……)
心臓の音が煩くて、思考がままならない。
アイシテルってなんだっけ。僕も『愛してる』けど、もしかして彼の『愛してる』は違う『愛してる』で………え、そもそもこれ、日本語?
色々と混乱する僕の口から飛び出た言葉は一言。
「……僕も、愛してる、よ?」
だった。
最初のコメントを投稿しよう!