禁断の狂愛(1)彼は恋人だった

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 一生に一度は願う女性達の夢。  今日も何処かの高層ホテルでは幸せなムードに包まれている。  かく言う侑子(ゆうこ)は、そのムードの中に居た。円形のテーブル席で複数の人と食事をしている。  煌びやかな内装に、前菜から順に置かれてゆく料理の数々。来客者は普段よりもおめかしをして、ドレスやスーツを着こなす。  今日というおめでたい日を迎える為にーーー  時が経ち、司会者の女性がマイクを持って進行をし始めた。 「では、新婦と新郎がご登場します。盛大な拍手と共にお出迎えして下さい」  待ってました! という柔らかい雰囲気で部屋の明かりが消える。向かい扉にスポットライトが当たる。  皆は椅子に座ったまま、登場する予定の扉に身体を向けた。  新婦と新郎が考えたであろうウェディングソングが流れ出し、扉がバタッと開く。  今回の主役達が現れた。スポットライトに照らされ、2人で軽くお辞儀をする。  周りから盛大な拍手が送られていて当の本人達は嬉しそうだ。  この幸せな空間で喜ばしいと思う人が大半だろう。侑子を除いては。  そう簡単に2人を祝ってあげられるような心を持ち合わせていない。  侑子の手元からは拍手の音が聞こえてこない。2人が侑子の前を通り過ぎて背中を見せるまで見つめていた。  2人共メインテーブルに着席する。  どうやら、侑子の存在には気付いていないらしい。一応、マナーとして失礼のないような服装とお化粧をしている。  本当は侑子が新郎と隣に座る筈だった。  あの新婦の隣に座る新郎は、侑子の『彼氏』だった。  それも学生時代に付き合っていた、元・彼氏だ。  侑子は胸元に手を置き、そのまま服を掴む。複雑な気持ちで2人を見つめる。
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