第1章 届く想い

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自分の部屋でパソコンにディスクを入れると変な画面、リモコンが表紙の画面が私の目を覆った。 この道具は二つで一つなんだろう、画面下には『リモコンは絶対無くさないで下さい』と表記されていた。 私はダウンロードのボタンを押した後、待機時間30分と書いてあったのでその間お菓子を食べたりお茶とか飲んだり音楽を聞いて時間を潰していた。 「あっ、起動した!!」 『リモコン承認、リモコンは本人の物と一致しました』 これは声が出る本格的な奴だ。でも、この機械なにをするやつなんだろう? 『ピーピー、人意操作を行いますか?』 じ・ん・い・そ・う・さ? その不穏な単語に一瞬ハテナが過ぎって体が鈍る。 「どうせ嘘に決まってる。そんな物があったら誰も苦労しないよ」 微笑しながら承認ボタンを押していると、急に画面が切り替わり、上から順に人(固定)、時間、場所、行動と画面に出た。 その下には『リモコンで書いて下さい』と注意深く書かれていた。 人意操作を行いたい人の名前を書けばいいって事? どうせ操れるなら森木君でも書こうかな?  私は人に『森木世異』、時間に『明日の登校』、場所に『学校の門の前』、行動『告白された女子を振って、私に告白する』とリモコンで打った。 もし、これが本物だったらなんて都合がいいんだろう。  まぁそんな事あるはずないよね。 私はリモコンの決定ボタンを押して、『送信しました』と出たのでディスクを取出してパソコンを閉じた。  「あ~あ、こんな嘘っぱちそうなアプリを何で入れたんだろう。ってかこれ誰のよ」 もしこれが本物だとしたら私はなんて悪人だろう。 まぁ、そんな事が起きるのはどっかの知らない異世界だけだろう。  私は癒しのサヴァランタイムに突入する為にリビングへと向かった。 今日は冷蔵庫に入れたサヴァランがヒヤヒヤになってとても美味しい状態になっている。 最高級のサヴァランと言っても過言ではない。 「サヴァラン!何度食べても飽きない味~」 私はそう歌いながらサヴァランを手に取った。 リビングの自分専用の椅子に座ってサヴァランをフォークで潰して口に頬張った。 『サヴァランの依存者』と言われても別にいい、振られた?んだから別にいいんだ!  お姉ちゃんがお菓子のクグロフを持って私の近くに寄ってきた。 なんとも帽子みたいな形のお菓子だ。 お母さんはあまり知られてない珍しいお菓子ばかり私達の家に置いてある。 だから、クッキーの存在を知らなかった時はホントに自分が無知すぎて恥ずかしかった。 だけど、そのおかげで私はサヴァラン、お姉ちゃんはクグロフに出会った。 「理沙っ!なんか嫌な事あった?いつもよりなんか雰囲気暗いわよ。嫌な事あるならこのお姉ちゃんに言ってね」 「う~ん、嫌な事って言うより残念な事なんだけど……」 「何っ?」 ここで絶対言わなきゃ駄目な変な威圧感がお姉ちゃんから漂っていた。 まぁ、もう振られたから言ってもいいよね。 「好きな人に振られた」 「えっ、理沙に好きな人いたの?」 姉の変な驚きと私が好きだったんじゃないの?と言われんばかりのオーラを姉から感じて即座に下に俯く。 「うん、そうだよ。私は森木君って言う子が好き。ずっとつけるほど好きだった。でも、森木君に彼女ができて気づいた。私には告白する勇気が無かったんだって……だから、私は身を引いたの」 「そんな思いを捻じ曲げて、理沙は変わった?それはね羞恥心から逃げてるだけ。思いはね、願ってるだけじゃ叶わないんだよ。実行に移さなきゃ。その子を好きって言うぐらいなら奪い取る位、理沙には余裕だよね。だって、私の妹だもん」 お姉ちゃんは私を励まそうとしているのに私はなんて無力なんだろう。勉強ができるだけじゃ能がないって本当だね。 私はそんなお姉ちゃんに甘えて生きてきたんだね。  これからも嫌な事があるとお姉ちゃんに頼って生きていくだろう。 「お姉ちゃん、ありがとう」 私がそう言うとお姉ちゃんは照れながらこう言った。 『嫌な事あるならまた言ってねっ』と……。  ■  ■ ■  次の日、私は異様な光景を目の当たりにした。 昨日のラブレターすり替え悪女が学校の門の前で森木君と口論になっていた。 「ねぇ、どうして……」 「もうっ、海基とは付き合いきれないんだよ!」  何があったのだろうか?私にはその全貌が分からなかったが唯一分かった事が一つだけある。 あのリモートの効能は本物だという事を。 「理由を教えてよ……」 「お前……、騙してたんだろ。ラブレター入れたの私だって言ったよな?まさか、元々入ってたラブレターを破って自分の物にすり替えたってどういう事だよ!」 「誰からその話を聞いたの?」 「それはなぁ、流川から聞いたんだよ。俺はそんなアクドイ事をする奴とは付き合いたくない……、じゃぁ」  森木君が頭から怒気を巡らせて海基に罵声を浴びせて去って行った。 なぜか周りは何食わぬ顔で素通りしていた。 私は突然の事で話の内容が理解できなかった。 えっと、つまり私はリモートのおかげで悪女もとい海基と呼ばれてた女子から森木君を奪還できたって事? 私は自分のクラスに行って、愛理に事の本末を尋ねた。 「ねぇ、どういう事?さっきの森木君の会話聞いてたんだけど。何で愛理の名前が上がってたの?」 この学校には流川という苗字は珍しい名前なので愛理しかいないはず。 いたとしたらドッペルゲンガーかなにかだ。 「しょうがない、バレちゃったかー。世異には言わないでって言っておいたんだけどな」 「私のラブレター捨てられてたとこ見てたの?」 「見てないけど……、憶測だよ。だって理沙がラブレター入れたの知ってたのに他の人が世異に告ってたなんておかしいなぁって思っただけ」 「だから、森木君にその事言ったんだ……。私の為に……」 「うんっ、だから心配しなくていいよ。理沙は高校ライフを満喫して」 これもあのリモートの影響なのだろうか。 愛理がとても怖く恐ろしい存在に見えてきた。 私の為だと言ってくれたけど、そんな事やるならあの海基って奴と一緒じゃない。  あの優しい愛理を変えてしまった、あのリモートの存在が恐ろしく感じた。 「あっ、世異が来たみたいだよ」 森木君がなにやらデッカイ棒みたいなのを持っている。 よく見るとそこには……。 「ドッキリ大成功!」 これは今考えたら絶対ありえない森木君が書き加えたドッキリだった。 人意操作なんてやっぱり嘘じゃん。  私はつくづくそう思った。
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