第1章 届く想い

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森木君から聞いた話はこうだった。  ◆ ◆ ◆  俺はケータイを開いていた。 メールアドレスを開いていた俺はいつも俺の近くにいる何かを見ている女子をちら見していた。 黒い艶のある長い髪、綺麗な潤んだ黒い瞳でこっちを見ている子、近所に住む流川愛理の親友で野坂理沙と言うらしい。 あの子は何を見てるんだろう。  俺を見ているのか?いやっ、違う。 たぶん、俺の周りにいる下校している男子を見ているんだろう。 俺はきっとカモフラージュの為に使われているんだ。  俺がメールアドレスを見ているとマナーモードのままメールが鳴った。 なに、なに? そのメールは流川からだった。 『ちょっと、聞きたいんだけど、理沙の事どう思う?』 『うん、好きだよ。理沙、知り合いたい。仲良くなりたい』 そう流川に返信したらすぐに返って来た。 『実は理沙ね。森木の事好きなんだよ。会話がいつも世異の事ばっかりだから』 『えっ、絶対嘘だ。そんな訳、俺を好きになる訳ないじゃん。嘘も休み休み言ってくれよ』  そこから流川からメールの会話が途切れた。 俺は後ろに振り返り、あの子を見てニヤついた顔をしてしまった。  恥ずかしくなってダッシュして家に帰った。 変な眼で見られただろうか。  あの子に変なとこで笑う、そんな変人的な眼で見たと思われたくない。 そうだ、もしあの子が俺を本気で好きなら俺が告白されているシーンを見たら猛烈に嫉妬するはず。 なぜか昔からあるこのアプリケーションを使うか試す。 そして、流川が本当の事を言ってるのか冗談をいってるのか真意を確かめる。 なんでこのアプリあるんだっけ?まあいいか。 このアプリの存在理由はどうでもいい理由な気がするので、あの子に本当に好きか流川にこの作戦を提案した。 『あの子ならたぶんこれ位されたら喜ぶんじゃない』 『演劇部の知り合い探して告白シーンさせるよ。たぶん、一日で交渉できるから。適当に俺の所に誘導させといて』 『知り合いいるの?』  たぶん直感だが演劇部の海基伊美(うみきいみ)はやってくれるだろう。 知り合いではないが演技は上手かったのは覚えている。 この直感はどこから来るのか分からないがきっとやってくれるはずだ。  俺は次の日、体育館で文化祭の為に演劇の練習をしている海基に頼んだ。 「お願いだ。やってくれ。報酬は弾むから」 「疑心暗鬼すぎ。まぁ、報酬があるならやらなくもないか」 向うは偉そうにしていたが今はしょうがないだろう。 あの子の本心を知る為だ。 承諾を得たので、昨日の夜に徹夜して書いた台本を海基に渡した。 海基は引きつった顔をして、嫌そうな眼をしながら台本を見ていた。 「これやるの?キモいわぁ」 海基は俺の台本を見て鼻で笑ったが俺は嫌そうな顔もせずに堪えていた。 「ぉ、お願い!」 「まぁ、やるけど」 これで役者は揃った。 作戦の為、メールアドレスを教えてもらった。 報酬だけでしてくれる人とは思わなかったがやっぱり思った通りだった。 俺の直感恐るべし。  俺は愛理に海基の勧誘に成功した事を報告した。 『勧誘成功。そっちの状況は?』 『ラブレター大作戦っての提案したけど。海基って子には屋上待機って言っといて』 『分かった』 メールで海基に『明日、屋上待機』と書いた。  これで作戦はばっちり、これで好きなのか知ることが出来る。 ケータイを見ながら胸を高鳴らせていた。  ◆ ◆ ◆  「うん。俺も付き合いたかったんだ」  俺はあの子以外の子に言ってしまった。 これは演技だがあの子を悲しませてしまっただろうか。 やってしまったと言う後悔の念が自分の心に押し寄せてきた。 愛理の言う通り、あの子は本当に俺の事が好きだった。 なぜ、俺は気付かなかったのだろう。 こんなにもいつも近くで見てくれてると言うのに。  気づいていたけど俺は告白を避けたいが為に逃げていた、勘違いかもしれないという事が怖かったのか。 「あとは彼女がリモートでなにをするかだけだね」 「ああ」 「もう、後戻りはできない。好きだった事を試していたなんて事知ったら彼女受け入れるかしら?嫌いになって振るんじゃないの」 「そんな事であの子が嫌いになるはずない」 俺は自分に言い聞かせるように言った。 「じゃぁ、私帰るわ」 「あの子に会わないようにな」 「そんな事分かってるわよ」 あの子はきっと今頃泣いた後、あの機器を拾い自分の家に持ち帰っているだろう。  俺はあの子に会わない為に一時間半、ジュースを飲みながら屋上から外を眺めていた。 帰る頃、俺のケータイからメールが来た。 恋愛リモートからだった。  悪いのは俺なのだが、なぜかあの子が悪いような内容だった。 筒抜けだよ。これ信じてるのかな?  明日、ホントの事を言おう。 そして、許してもらえるか分からないけど全て謝ろう。  全て謝って、それでも俺を受け入れてくれたらその時は……。 俺はなぜか涙が止まらなかった。  どこで俺はオカシクなってしまったんだろう。 幼稚園、いやっ、前世? 前世はきっとあの子のストーカーだったに違いない。  ソレトモナンダロウ……。 考えるほど頭が痛くなって、胸が張り裂けそうになって痛い。  俺はあの子の何だったんだろう……。 まだ、会話もろくにした事が無いのにその言葉がグルグルと回る。 まるで、昔に親密だった様なセリフが……。  次の日、俺はあの子の予告通りに物事を進めていった。 「それはなぁ、流川から聞いたんだよ。俺はそんなアクドイ事をする奴と付き合いたくない……、じゃぁ」 これで最後の演技だ。 これ以上自分の罪を増やしたくない俺はあの子の書いたシナリオ通りに海基を振った。 こういう伏線を継ぎ足すのは結構自分では上手いと思う。 そして俺は事前に用意したドッキリの看板を持ってあの子の元へと駆け寄っていった。
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