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「そんな、嘘だろ!嘘って言えよ!」怒った涼河が魁斗の胸ぐらを掴む。
「嘘じゃないんだよ…。俺だって、もっと生きたい…。みんなと、話したい。遊びたい。笑いあいたい…。だから、提案があるんだ。聞いて」
2人とも半泣きになっている魁斗に唖然している様子。私もだ。
「泣いてるのは、好きじゃない。だから、この4人で楽しい思い出を
作っていきたいんだ!1年間で、できるだけ多く…。おもい、でを…。」
ついに泣き出し、うずくまってしまった魁斗。
「でも、発作は大丈夫なのかよぉ。まずはそこだろ。」
と、涼河が言って奈々美と目を合わせ、奈々美がうなづいている。
「大丈夫だよ。薬あるし。それと、今週の日曜空いてるかな?」
「空いてるよ」と私。
「空いてる、けど」と奈々美。
「空いてる」と涼河。
「一番最初に行きたいとこあるんだ。隣町の『七色デパート』ってとこ。
ゲーセンあるし、映画館あるし、バイキングあるし、買い物もできるし、
あんだけ揃ってるのはなかなかないぜ!みんなで電車に乗って行きたいんだ。
少なくとも俺にとって、お前らといる時間は生きる理由だからな。」
私は思った。
どうして彼はこんなに前向きなのか。病気で寿命1年って申告されてるのに。
辛くないのだろうか。考えないようにしているのか。
今は辛くなくて、過去は辛かったとしたら、過去どれくらい泣いたの。
疑問ばかりだ。私は、彼のこと何も知らないな…。
「行こうぜ!4人で!思い出づくりpart1!『七色デパート』に!」
と、涼河が目を輝かせて言った。
「ちょっと張り切りすぎじゃない?」と、奈々美が優しく突っ込んだ。
4人で笑いあった。笑いすぎてお腹が痛くなった。
ふと思った。『七色デパート』に行くことが思い出づくりpart1じゃない。
笑って楽しいと思った回数が、思い出になっていくんだ。
私は心に決めた。
魁斗の前では絶対に泣かない。魁斗を悲しませない。
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