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糸のように細い月が、南の空に浮かぶ頃、愛理は花宮神社へ向かっていた。
鳥居をくぐると、バッグから香水瓶を取り出した。昨日、花宮神社で去り際に切り取った千雪の髪を取り出すと、くるくると輪っかに編み上げる。
鳥居の内側、拝殿へ続く石畳の両脇に、千雪の髪で編み上げた輪っかを置き、その上に水晶玉を載せた。
3つ目は拝殿に隠す。
そして、愛理は細い指先にナイフを滑らせる。
赤いしずくが、水晶玉の表面をつぅーとしたたり、千雪の髪を紅く染め上げる。
水晶玉は、次第に真っ赤に熟れたリンゴのようになった。
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