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(兄さま……戻ってきて……)
愛理は、祈るように目を閉じた。
「黄昏より暗きもの 血の流れより紅きもの 我 ここに闇に誓わん 全ての愚かなるものに断罪を 我の血を持って 結界と成す 緋炎結界‼」
赤い炎が水晶玉の間を走り、三角形の炎の陣が火柱のように天まで突き抜けた。
つかの間、炎が弱まりふっと消えた。
(これで陣が完成したわ。後は生贄を待つだけ……)
オーナーは、愛理に守谷千雪を生贄にし、兄の復活の儀式をするように命じていた。
千雪を葬った暁には、愛理は店を辞めて良いという。
(兄さま……もうすぐ会えるのね……)
糸のような月を見上げた愛理の白い頬を、真珠のような涙が伝い落ちた。
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