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千雪は、日本の伝統芸能「能」を代々継承する能楽師の家に生まれ、今年で高校一年生になった。
翌日のお昼時、千雪はクラスメイトの冬真と二人で屋上でお弁当を食べている。
冬真がおもむろに千雪の髪に手を伸ばした。
「千雪、自分で髪を切ったのか?ここ、斜めに切れてる。」
千雪は自分の前髪を引っ張ると、確かに斜めに髪の毛が切れている。
「あれっ……本当だ。俺、自分では切ってないけど、なんでだろう?」
千雪は、首を傾げた。
すると、冬真は箸を置いて、千雪の前髪を手のひらに乗せ、しばらく目を閉じると、今度は観察し始めた。
「どうしたの?冬真……」
「お前…最近変わった事はなかったか?例えば、知らない奴に付けられているとか」
「ん…特にないよ。」
「あっ!でも、最近、綺麗なお姉さんに神社で会うんだ。歌がすごく上手いよ。」
「その女……怪しいな。どこの神社で会ってるんだ?」
「家の近くの花宮神社だよ。桜がすごく綺麗なんだ。」
冬真はわずかに顔をしかめると、千雪の髪から手を放した。
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