15人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
そんな華やかなホールのバックヤード。
鏡の前で、口紅を差している。
「今日も可愛く完成♪」
「客が来る前に、奏に挨拶♪」
鏡に向かってにっこり微笑むと、燃えるような長い赤毛をなびかせて、バックヤードのドアを開ける。
リズミカルな音楽と、キラキラと輝くシャンデリアが押し寄せてくる。
「おはよう、奏。」
愛理が声をかけると、バーカウンターの向こう側で無言でグラスを磨いていた青年が顔を上げた。
年は、20歳を少し過ぎたくらい。
長めの前髪が目にかかり暗い印象を与えるが、愛理を認めると優しく目を細めた。
「今日は、珍しく白のドレスなんだね。」
「そうなの。今日は、兄さまの命日だから……」
「そうか……愛理は、お兄さんのことが大好きだから」
奏は、フルーツの盛り合わせを愛理の隣に置いた。
最初のコメントを投稿しよう!