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黄昏時、愛理は花宮神社にいた。
社殿の方からは、風流な歌声が聞こえてくる。
(なかなか上手ね……まだ声変わり前の少年って感じだけど……)
愛理は、感心して歌を聴いていたが、夜には店に戻らなければならないので、そっと木陰から出て、少年に近付いた。
少年は、愛理に気が付かず、無心で扇を広げて歌っている。
「君、歌が上手ね……」
愛理が話しかけると、少年はびくっとして振り返った。
扇が宙に浮いたままになっている。
「えっ!!」
「びっくりした……人がいるとは思わなくて……」
少年は、あたふたと扇を閉じると頭を下げた。
「あら、大丈夫よ♪」
愛理は少年の顔をまじまじと見た。
年は、15、16くらいだろうか。透き通るような白い肌に、大きな黒い瞳が、愛理を不思議そうに見つめ返してくる。
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