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「いいわよ。」
愛理は静かに息を吸うと、昨晩歌っていたバラードを歌い出した。
バラード独特の切ない歌詞が、神社にゆったりと流れる。
細く長いビブラートを効かせて愛理が歌い終える。
「愛理さん、すごい……歌うのが好きですか?」
「そうね……歌は純粋な私の気持ちを表現出来るから好きよ。」
「じゃあ、私はそろそろ行くわね。また会いましょう、千雪。」
「はい。今日は歌を歌ってくれてありがとうございました。」
千雪は、ちょっと名残惜しかったが、鳥居に向かって歩き出す愛理に手を振った。
ザァッーといきなり強風が吹いた。
千雪は咄嗟に目をつぶった。
風が止んでそろそろと目を開けると、愛理の姿はすでに無かった。
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